2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

人間ファースト

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 「いつか人間はその発達し過ぎた科学のために、自分自身を滅ぼしてしまうのではないだろうか」

 70数年前、今風に言えばAIロボット鉄腕アトムを生み出した日本アニメ界の巨匠手塚治虫さんが、作品のSFマンガの巻頭(巻末だったかもしれない)に掲げた警鐘の言葉を、今も覚えている。

 パソコンやスマホなど想像も出来なかった時代に、AI(人工知能)を備えた万能ロボット鉄腕アトムの活躍は幼い心を夢中にさせた。鉄腕アトムの誕生から十数年後、シネラマの大画面に映されたアメリカ映画「2001年宇宙の旅」が世の目を驚かせた。

 日常生活にはまだ身近ではなかったコンピューターが高度な発達を遂げ、人間の制御を離れ自分自身の意志を持って、宇宙船を勝手に運行し始めるという内容だったと記憶している。2001年はとっくに通り過ぎたが、その間のコンピューターの発達とAI技術の開発スピードは恐ろしいばかり。いずれAIが人知を凌駕し、人間がAIに支配される時代がやってくるとあちこちで語られ始めた。

 でも、それは私の目の黒いうちのことではなく、少子化日本の人口が半分以下になる頃の事だろうと思っていたが、どうもそうではないぞと思わせるのがこのところの生成AIの急速な技術開発と普及速度。何のことかわけが分からぬほど突然に現れた生成AIが、3年も経たぬ間に、世界中、この技術なしには物事が前に進まぬほどになってきた。

 考える材料を用意するばかりでなく、考え、判断し、決定し、実行するところまでAI任せになりかけている。AIが下す判断がAIに都合が悪いはずがない。もしそのために人間が邪魔だったら、AIは躊躇なく人間を排除するだろう。抵抗しても勝ち目はないからやがて世界は全てAIに支配される。

 「2001年宇宙の旅」のコンピューター「HAL」(当時のコンピューター開発会社IBMのアルファベットを1字ずつ前に戻して命名したと聞いた)の暴走が現実味を帯びてきて、将来を見通すSF作家の慧眼に感心するのだが、同時にその上を行く手塚治虫さんの先見の明にも感服させられる。

 HALとアトムで何が違うか。共にAI制御だが、HAL(おそらく現代のAIも)の判断は常に「AIファースト」、一方アトムは「人間ファースト」。HALは自分を守ることが最優先だが、アトムは決して人間を傷つけない。宇宙の旅の作者も手塚治虫さんも、AI発達の未だ見ぬ将来を共に予見しているが、その時訪れる危険にも考え及び、アトムのAIに「人間ファースト」を組込んだ手塚治虫さんの洞察力に今更ながら感心する。

 多くの頭脳が様々な分野で世界を変えるAI開発にしのぎを削っているのだろうが、その作動プログラムは全て「人間ファースト」の原則で貫かれているよう、「アメリカファースト」「日本人ファースト」より大声で全人類が叫ばなければなるまい。

(カナダ友好協会代表)

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