2026年04月27日(月)

コラム・エッセイ

真相推理

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 石油と戦争に世界が振り回されている一方で変わらぬオータニさんの活躍は、人いきれで悪臭に満ちた空間への消臭剤の一吹きにも似て息苦しさをひととき和らげてくれるが、同じ時、不可解異様な出来事も起こり、ニュースワイド番組の時間を埋めている。

 若い命が奪われた。何がどうしてこうなったのか?謎めいた展開の中で1カ月が経過した事件。謎解きクイズのヒントのように数日ごとに明かされる関連物や事実を前に、スタジオのコメンテイターや司会者、場面毎に招かれた専門家達が事件に関わる事実を追いながら事の背景、構造をあれこれ推測し、場を盛り上げる。だが、そこでは物証も証言も何一つない中で推測が語られているだけだから、ここで真相が明らかになることはない。

 結局番組の面白さは、誰にも分かっていないことの真相を何も分かっていないコメンテイターの想像に乗って推測していくことにあって、事の真相は番組を見なくてもいずれ捜査を終えた警察が明らかにしてくれるので、少し待てば目的は100%達せられるから、コメンテイター達の話を純粋に楽しむのでなければ時間をかけて視聴するのに余り意味はない。

 それならなぜ見ているのかと問われるだろうが、これへの答はこうだ。被害者にも加害者とも係わりはなく、事件にまつわる物や事実に触れる機会もなく語るスタジオ登場者の話がなぜ面白いのかというと、番組の流れに乗って語るコメンテイターの言葉と表情、声の組み合わせがたまらなく面白いからだ。

 各人の顔も声も言葉も、表情や音声の変化も互いの様子も、画面を通して自分の目で確認できる。全ての証拠品を前にして尋問の現場にいるようなものだから、これは推理でも想像でもない。事実に触れながら判断できるのだ。

 何かについて語るとき、何かを問われて答えるとき、自分の言葉にどれくらい確信を持って、あるいは自信のない状態で語っているか、その表情や口調に実によく表れる。

 この人、ここは自信を持って語っているな、ここは直前に誰かが言ったことを気にしながらボロを出さないように気をつけながら喋っているなと推し量り聞いていると、本当に面白い。

 もちろんこれも推理であることは事件へのコメンテイターの推理と変わりないが、自分の推理は実際に見聞きしていることを基にしたものだから、少しは真相に近いと主張できるだろう。

 真実をいち早く的確に視聴者に届けるというニュース番組の使命を、商業的価値観からの要求に応えながら果たすことの難しさを感じながら制作に携わっている人達からはこんな話は余計な戯言だろう。

 折角の有能な人材をコメンテイターに揃えた番組を見るのに、本来の見方とは違っても、普段会うことも叶わない有名人達の人間観察の機会として利用するのは、それなりに時間の有効利用ではなかろうかと、今日も自分を納得させている。

(カナダ友好協会代表)

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