2026年06月01日(月)

コラム・エッセイ

No.1 ウンカ①

中須里山通信 形岡 瑛

 昨年8月末から9月の初めにかけての数日間で、誰も見たことがないような恐ろしい光景が現れた。

 今年はよくできたと思っていると突然一部がぼっくりとへこんで茶色に変色している(坪枯れ)。それが一晩の間に全面に拡がった。ひどいところは、イネが残すところなくぺしゃっと倒れて灰色に変色している。ウンカの大発生だ。

 私の住む中須はもとより、八代、須々万、長穂、鹿野、高水、三丘、光など。山口県では特に西部一帯、下関、豊田、豊浦と美祢。

 図はウンカの被害発生情況(ほ場の被害面積)だ。この度の被害がいかに大きかったが分かる。自家用米も穫れなかった農家も少なくない。

 昨年は梅雨入りが6月11日、梅雨明けが7月30日と平年より10日も長引き、この間、ずっと梅雨前線が停滞し低気圧が居座って降水量は約2倍、その間、中国の雲南からジェット気流にのってウンカが飛んできて降り続けたのである。県の病虫害防除所はウンカの飛来数の増大に対し、警報を発し農薬による防除を呼びかけたが、その効果は見られなかった。この度の特有の事情としては例年より飛来が1カ月早く、そのため初期防除が遅れたことがある、と県病虫害防除は指摘している。いい時期に防除が功を奏して被害を免れたところもあるが、ごく少数である。

 いろいろ聞いてみると、農薬によるウンカの防除は実際上実にむつかしい。

 ウンカはベトナム北部で発生、中国雲南に降りてそこで繁殖しそれが日本に飛んでくる。

 その頃、田んぼでは田植えがすんだイネが株を張り養分をたっぷり吸っている。降りてきたウンカはその株元の茎に卵を産み付ける。1頭が100個以上の卵を産む。そのウンカが卵を産み付ける前に防除をしなければいけない。卵を産み付けてしまうとそれが幼虫になるまでの間は薬が効かないそうだ。幼虫が成虫になり。イネから養分を吸い取り始める前にやっつけないとだめだという。

 それが、何回かに分けてやってくるのだから、この度のような桁違いの飛来数があると1カ月の間一定間隔で薬を撒かないといけないということになるが、実際にはそんなことはできるものではない。

 考えるべきは、そもそも農薬による防除には限界があるのではないか、ということだ。たとえその時限りの目先の効果があったとしても、それによる弊害の方が大きいのではないか。

1918年10月31日『防長新聞』=県立山口図書館所蔵

2020年9月4日、周南市須々万和奈古バス停付近

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