コラム・エッセイ
No.7 一粒の種から
中須里山通信 形岡 瑛例年より遅れがちながら、種籾(たねもみ)を水に浸けて発芽を促す作業に取りかかった。
籾に水分が浸透すると発芽を抑制している物質(アブシジン酸)が溶け出して芽が動き始める。その前に選別と消毒をする。しっかり熟した充実したものを選り出すために、比重1・13の塩水に浸けて浮き上がったのは取り除く。消毒は馬鹿苗病(*)などの病原菌を殺菌する。無農薬なので60度で10分の温湯消毒をする。
昔はこんなことはしなかったと聞く。共同で「早乙女」が集まり田植えをしていた。苗代で育った苗を取って手で植えるのでそこで選別ができる。今は機械植えなのであらかじめ種の選別と殺菌処理をしておく必要がある。
一週間から十日くらいで芽が出始めると、その芽が出揃うように水温を上げ籾の一角が少し膨らんできたところ(写真)で乾燥させて発芽を止める。苗箱に土を入れ、籾を入れ、その上を土で覆って苗箱を苗代に並べる。この一連の作業がすべての始まりだ。
苗は春から夏にかけて気温が上がるとともに芽が伸びてて生長していく。一粒の種から15から20本、多い場合は30本と分げつして茎が伸びる。その一本一本に穂が出来る。一つの穂に100粒以上の籾が付く。それが米であり、翌年の苗の種となる。一粒の種の中にそのような仕組みができている。
足下の一本の小さな草でも同様である。その草の中でどんなことが起きているのか。植物が環境に応答して生長していく仕組みはどのようなものなのか。自分で米作りをするまでは全く考えが及ばないことだった。
植物は大気の中から炭素=二酸化炭素を取り込み太陽の光エネルギーの力で土の中から吸い上げた水とでグルコース(ぶどう糖)を作る。二酸化炭素の中の酸素を分離して大気の中に吐き出す。根から吸収した水とアンモニア(窒素)とリンとグルコースとでタンパク質を合成し、そのタンパク質が植物の体を作っている。
人間はその植物に対して何をなしうるのか?
*細菌がジベレリンを活性し草丈が馬鹿みたいに伸びて実が付かなくなる病気、この細菌が馬鹿苗病菌と呼ばれ、この研究から植物のなかでできるジベレリンが発見された。
2020年4月28日撮影
