2026年06月01日(月)

コラム・エッセイ

No.5 引き算の農業への転換を

中須里山通信 形岡 瑛

 化学肥料を投入する慣行栽培では、土の中に投入した窒素化合物(アンモニア)の 吸収が早くイネが早く大きくなり、養分吸収も盛んで、吸収したアンモニアがウンカなどの虫やイモチ菌を引きつける。実証的な研究報告で「有機栽培では…イネの初期のウンカの侵入が少なく」、ウンカを引き寄せるアンモニア化合物の濃度が低い、という結果が報告されている。(*)

 私の調査ではウンカ被害がなかったところは以下の通りだった。

 ①無農薬、無肥料の自然栽培=須々万の茅原さん。萩市弥富の宮内さん。

 ②無農薬・魚粉系肥料の施用=秋芳町の倉重さん。

 ③無肥料で初期除草のみ除草剤で殺虫剤・殺菌剤不使用=周東町祖生の登尾さん。

 ④魚粉系肥料、初期除草のみ除草剤使用。殺虫剤殺菌剤不使用=周東町中曽根の世良さん。

 美祢市秋芳町の倉重さんは一続きの20ヘクタールを②と④の栽培法で14年続けている。(写真)このなかに挟まれている農薬化学肥料を使う慣行栽培ほ場も被害が全くなかった。

 八代のツルの里ファームのエコ100認証ほ場1.2ヘクタールは周辺の慣行栽培ほ場に囲まれているが、ここだけが被害を免れている。

 しかし、有機栽培であるにも拘わらず甚大な被害を受けたところがあった。中須では私の近所の田んぼで慣行栽培よりひどい被害が出たところがある。側を通るとぷんと匂いが来るくらい濃厚な堆肥を投入している。また、これまで無肥料、除草剤一度だけで殺虫剤、殺菌剤不使用のTさんは、この度に限って濃厚な鶏糞堆肥を用いていた。すぐ側の化学肥料使用のところよりひどい状態だった。

 農薬の濫用を止め多様な生き物が生命の連鎖を持続できるようにすること。窒素肥料の投入を控え土壌と地下水の窒素汚染を防ぐことがウンカを始め病虫害対策の要であると結論できる。つまり農薬・肥料を投入する足し算の農業から引き算の農業へ転換することだ。

 それでも、享保の大飢饉のようなことが起きないとは限らない。その他の災害で食糧危機になるかも知れない。その時のために、国の責任で少なくとも2年分の米の備蓄をしなければならない。

 *桐谷圭治「『ただの虫』を無視しない農業」98ページ2004年3月築地書館

倉重さんの冬期湛水田(2021年3月23日) 

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