2026年06月01日(月)

コラム・エッセイ

No.9 棚田

中須里山通信 形岡 瑛

  中須は元は北と南と二つの村だった。平らなところがほとんどない。小さな棚田ばかりだ。南は農地が小高い丘のような山合に小分かれしている。北の棚田は景観が見事で、山口県の棚田20選にも選ばれている。その一角に10アール余りの田んぼが8枚に分かれているところ(写真)を任してもらうことになったのが2012年。

 この山の斜面の農地が水田でなく畑だったらどうだろう。雨の度に土が流され、川に入り土砂が溜まっていく。そんな状態になったところに集中豪雨があると、一気に下流に土砂と水が流されて下流に当たる海岸の街は大惨事になるだろう。

 田んぼは毎年耕して水を入れ、代掻(しろか)きをして平らにし畦を補強していかないと崩れてしまう。代掻きで土を細かくし田んぼの底の水漏れを潰すのだが、何年か休耕している棚田では底が抜けてしまう。

 日本経済の高度成長のため農業の機械化が進み、人手が要らなくなり、働き手は農業から製造業などへと移動、過疎化が進んだ。すると今度は人手がなく機械がないとできない状態になった。その上、米が安くなり会社で働いて機械を買い費用を補填しないとやっていけないようになった。それも、高度成長が終わり、いま米作りをしている世代が動けなくなるとそのあとを引き受けるものはごく少数である。

 中須に住んでいてそんな有様を目の当たりにし何とかしたいという思いに駆られ、無農薬の米作りなら若い世代の共感を得て、賑やかな村を取り返すことが出来るのではと思った。

 まわりの人はびっくりしたようだった。経験もなく、既に65歳になっていた。そう思われるのも無理からぬ事だった。

2018年6月17日撮影

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