コラム・エッセイ
No.23「悲しき農村」⑤――病害虫と農薬・肥料(3)
中須里山通信 形岡 瑛ネオニコチノイド系殺虫剤が使用され始めた1993年、宍道湖では異変が起きていた。この年を境にウナギとワカサギが全く獲れなくなったのだ。その原因がネオニコチノイド系殺虫剤にあるとした山室真澄東大教授の論文が2019年11月、学術誌『Science』に発表された。水田に散布されたネオニコチノイド系殺虫剤が雨で流れ込み、ウナギやワカサギの餌となっている動物プランクトンやエビなど甲殻類が激減した結果であることが明らかになった。食物連鎖で一つになっている生態系への影響が実証され、世界に衝撃が拡がった。(*1)
生物系統で見ると、ウンカ、カメムシやミツバチ、トンボなどの昆虫も、クモなども同じ節足動物。魚には毒性がないといっても、餌がなくなっては生育できない。
念のため筆者はワカサギ釣りの盛んな豊田湖(写真、下関市)に行ってみたが、豊田湖は木屋川上流域に位置し周辺はほとんど山林で水田も少ないことから目立った変化は認められないということだった。
ネオニコチノイドの毒性は、神経毒性だ。その成分が体内に入ると本来の神経伝達作用を撹乱し、生命活動を狂わせ、異常な興奮状態などを引き起こす。(*2)
この神経伝達作用の仕組みは、節足動物だけでなく哺乳類、ヒトも共通しており、ヒトの健康、発達期の脳への神経毒性で発育を阻害する。
東京女子医科大学東医療センターの平久美子氏は「ネオニコチノイドは…腸管粘膜、脳血液関門、胎盤を通過し哺乳類では中枢神経系、自立神経節、神経筋接合部に関連する広範な症状を起こす。脳に蓄積される傾向がある」と指摘する。(*3)
(*1)山室真澄『魚はなぜ減った 見えない真犯人を追う』2021年11月1日、クリト社
(*2)木村―黒田純子、小牟田縁、川野仁「新農薬ネオニコチノイド系農薬のヒト・哺乳類への影響」(「臨床環境」21 2012)
(*3)平久美子「ネオニコチノイド系殺虫剤のヒトへの影響」(「臨床環境」21 2012)
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ワカサギ釣りが盛んな豊田湖、左手前は釣り桟橋(2021年12月5日)
