コラム・エッセイ
No.27 「悲しき農村」⑧ 病虫害と農薬・肥料(7)
中須里山通信 形岡 瑛コウノトリ育む農法
2017年9月28日、周南市三丘在住の徳永豊さん(68)は、光市と隣接する千田郷の農地でコウノトリを発見した。足環が付いており、兵庫県豊岡市の放鳥したものであることが確認された。
日本のコウノトリは、戦後、農業の機械化、農薬の多用などによる影響で激減し、兵庫県と豊岡市など但馬地域の自治体と住民で1955年「コウノトリ保護協賛会」が結成され、人工飼育などの試みが続けられたが、1971年絶滅した。その後、ロシア・ハバロフスク市から幼鳥6羽をもらい受け、人工飼育と繁殖の取組が行われてきた。
ネオニコ殺虫剤以前にも農薬の影響にも注目し、無農薬や減農薬、冬期湛水などで生き物が豊富な環境保全に取り組んだ。山室真澄東大教授は前掲著書(*1)で、その成果を紹介している。
豊岡では、1989年に人工繁殖に成功、92年野生復帰計画が開始された。2007年にはようやく人工巣塔のつがいからヒナが誕生、46年ぶりに巣立ちした。翌2008年には野外の5つのつがいから、ヒナが8羽巣立っていった。(*2)
同年10月18日、周南市の長田海岸で、足環の付いていない幼鳥が確認されている。
コウノトリ育む農法はツルの里八代の取組にも導入され、農業法人「つるの里ファーム」など冬期湛水栽培などに取り組んでいる。
千田郷でコウノトリを確認した徳永さんは、元周南市職員でツル保護担当をしていた。今、仲間といっしょに、コウノトリの巣塔造りに取り組もうとしている。
コウノトリ、ツルと合わせて、生き物がゆたかな自然環境があってこそ、本当の安心安全な農産物ができるようになる。それが現実になることを期待したい。
(*1)山室真澄『魚はなぜ減った?』
(*2)豊岡市ホームページ「(コウノトリ)野生復帰プロジェクト」による。
