コラム・エッセイ
No.37 「悲しき農村」⑱ 稲作10年目(10)
中須里山通信 形岡 瑛異常気象、天候不順、気候変動ということが言われ始めて何年になるのか。もはや、異常、不順、変動が普通のことになっている。
冬に積もった雪が徐々に融けて山に蓄えられ、湧き出て来る。田植えの頃、梅雨のしとしと雨が田んぼを潤し、梅雨明けとともに真夏の太陽が照りつけ気温が上がり、秋口に出穂、じっくりと実っていく。気候が安定し、収穫に絶好の秋日和となる。このような季節の巡りはもう望めないのであろうか。
今年、冬の降水量が極端に少なく、山からの湧き水が乏しくなり、中須北では、今から田植えという時に、はや、岡山(*)の中腹にある足谷の堤が空になり、南でも山の湧き水を水源とする水路の流量が減っていた。植え付けもできないところがあちこちにあった。
水が十分当たらず、ヒエが繁茂して稲を押しつぶしたり、茎が堅くて、鎌で刈り取らないと稲刈りができないという田んぼもあった。特に目に付いたのは、稲の倒伏だ。仲間の一人は「“一発”(**)が高温で溶け出て、肥料がいっぺんに効き、稲が(徒長して)転けた」と言っていた。倒伏したところに雨が降り、籾が浸かると発芽したり、黴(かび)が生えたりしてだめになる。
「あきらの田んぼ」は、外から入れる肥料分としては雑草抑制の米糠、魚を原料とする液肥の葉面散布のみである。このようなことは起こらないが、水涸れやイノシシの被害がでたところと水が十分あるところとで明暗が分かれた。全体としては、これまでに比べ随分よい作柄となった。
(*)棚田の東にある山、中須で一番高い。標高約598メートル。
(**)一発元肥のこと=窒素肥料(主に尿素)を樹脂等の被膜でコーティングし、肥料成分の溶出を作物の生育に合わせてコントロールした慣行栽培の肥料。元肥、追肥、穂肥と栽培期間中3度にわたる施肥が元肥の時に一回ですむ。「省力化」がうたわれているが、コーティングの樹脂=プラスチックが溶け海に流れ込み、魚介類に蓄積されるなど、生態系への影響が懸念されている。
にこまるの脱穀作業(10月26日中須南久保)
