2026年06月01日(月)

コラム・エッセイ

No.53 農村の希望(1) 限界集落⑮ 四万十川中流の集落を訪ねて(八)

中須里山通信 形岡 瑛

 満州への分村移住は国策によるもので、各県市町村に人数が割り当てられ、抽選による選抜まで行われた。その際、所有する不動産を処分したり、親戚に預けたりした。また、二男、三男など資産を持たないものが選抜された。(『十和村史』)故に、帰還者は、生活手段にも事欠く状態であった。古城で吉野さん、安藤さんたちは、生きる手立てを模索して、椎茸栽培を産業化したのだった。

 安藤精馬さんは、大正13年生まれ。椎茸専業で、息子さんが跡を継いでいる。

《昭和18年、20歳で満州に。十川開拓団に入る。シベリアに送られた後、昭和22年に帰国した。

 明治以前から四万十川沿いで、椎茸の自然栽培をおこなっていた。気温と湿度が椎茸の生育に適しており、クヌギなどに鉈で傷をつけておくと椎茸が自然に発生した。昭和25、6年ごろから、(㈱)森産業の森喜作が、コマうち栽培の元祖だが、これに習って始めた。

 昭和33年に、研究会を発足させた。60戸の古城地区で60人が参加した。現在は20人である。干し椎茸の値段は4000円/㎏。昭和57年8月に、7000円/㎏になったことがある》というお話だった。

 安藤さんの表情に、満州への移住、敗戦直後の苦難、帰還後の生活困難を集落の共同の力で乗り越えてきた自信と誇りが感じられた。

安藤精馬さん(2009年7月6日、当時85歳)

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