2026年06月01日(月)

コラム・エッセイ

No.57 農村の希望(2)「究極の田んぼ」

中須里山通信 形岡 瑛

 四万十川中流の十川、古城集落を訪ねた翌2010年、岩澤信夫さんの『究極の田んぼ』(日本経済新聞社)が出版された。「究極」とは「耕さず肥料も農薬も使わない農業」だ。

 現代の機械化された「慣行栽培」では、田植機で十分生育していない苗=稚苗を植える。そのため、病害虫や気候変動に弱いイネになる。

 1980年から1981年にまたがる東北冷害、「青立ち」=稲穂が青いまま直立して立っている異様な光景の中で、黄金色に実った小さな田んぼがあった。それらは「お年寄りの小さな田んぼで、昔ながらの水苗代で育てた成苗を手で植えていた」。

 岩澤さんは、「苗が鍵を握っていた」として、水苗代と箱苗育苗とを結びつけ、しっかりした育苗を実現し、30年に及ぶ苦闘で、冬期湛水不耕起栽培の技術を完成させたのだ。

 普通、春に耕耘し、水を入れて代掻きをして植え付けをする。秋に水を切って田んぼを乾かし稲刈りをする。岩澤さんの取り組んだのは、その後、水を入れて冬の間も水を溜め、耕耘しないで、不耕起専用田植機で成苗を植える。冬も水を溜める、というのは本来の自然環境の生物多様性と食物連鎖が機能する生態系を保つ。

 岩澤さんは、不耕起栽培を『わら一本の革命』などで知られる福岡正信氏から学んだという。福岡氏は「無の哲学」を云う、「欲」から自由になり、極力人為を排するのだ。

 筆者は、こうしたコメ作りなら、若者が集まる農業ができるのではないかと考えた。むしろ、中須のような小規模の分散した農地の形態が強みになるのではないか。

福岡正信『わら一本の革命』と岩澤信夫『究極の田んぼ』 

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