コラム・エッセイ
No.63 農村の希望(2)微生物1
中須里山通信 形岡 瑛「のぶこの畑」では、寒波の来るこの時期、畑に残っている大根を掘り出し、土の中に埋めて保存する。形は少々いびつなものもあるが、たっぷりとした立派な大根だ。 そんな折、近所のTさんが「今年は大根の出来が悪いんよ。暑さがひどかったけえじゃろうか。肥料が足らんかったんじゃろうか。やっぱり土づくりをせんといけんのじゃろうね」と云うので、畑の主(筆者の妻)が、
「いやぁ、うちはなんもせんのよ。耕さず肥料もぼかしを少し使う程度」と云うと怪訝そうな顔であった。
夏には、集落の共同作業で、無農薬栽培の話が出た。筆者は、
「耕さないことだ」と強調すると、仲間の一人から「そりゃあなんじゃろうか? 微生物かね?」と問われので、
「そう、微生物だ」と応えた。
微生物は、1674年、オランダのレーベンフックが顕微鏡を使って発見をした肉眼では見えない小さな生物だ。アルコール発酵や味噌、醤油、パンなどの酵母や麹菌、きのこ菌、乳酸菌や大腸菌あるいは食物や動植物の遺骸を腐らせる菌、カビやさまざまな病原菌、ウィルスなどである。
この微生物について基本的なことを解明したのが、発酵の科学の先駆者パストゥール(フランス、1822年ー1895年)だ。パストゥールは酵母菌が増殖しアルコール発酵をすることを実験的に明らかにしたのであるが、これに対し、ドイツの化学者リービッヒが、「発酵は物質と物質との化学反応だ」してとパストゥールを批判し微生物という生命体の介在を否定し、大論争になった。
参考書目=川喜多愛郎『パストゥール』岩波新書。小泉武夫『発酵』中公新書。『現代農業』2022年1月号
「のぶこの畑」の大根。
耕さずともこんなに大きくなった。
