コラム・エッセイ
No.64 農村の希望(2) 微生物2
中須里山通信 形岡 瑛パストゥールは1854年には、リール大学理学部長に就任、この地方のアルコールやワイン醸造、ビール醸造業者から、アルコールができなくなり、ワイン、ビールが酸っぱくなる(酸敗)という訴えを受け、解決策を求められた。
パストゥールは、正常に発酵したワインと酸敗したワインとを顕微鏡で調べて、一方では、球状の微生物=酵母が、他方では棒状の微生物=乳酸菌が増殖していることを発見、ワインに乳酸菌が混じって酸敗を起こすことを証明して、酵母が熱に強く乳酸菌などは熱に弱いという特性があることから、ワインを60度で数分間熱処理し、ワイン樽を熱湯で消毒することによってこれを解決した。この低温殺菌法は、いまでも牛乳の腐敗防止などにも広く用いられている。
当時は、生命体の中での化学反応は未知の世界であった。リービッヒの批判は生命体の介在を示すパストゥールの説を時代遅れの神秘的な生気論の類いと決めつけてのことだったようであるが、ワインなどの発酵に酵母の働きがあることは認めざるを得なかった。ドイツの科学者ブフナーが、酵母が酵素を作って排出し、その酵素が発酵を起こしていることを発見したのはパストゥールの死後2年後だった。
日本では、古代に、稲麹(米にカビが生えたものを「コウジ」と呼ぶようになった)から麹カビを取り出し酒造りをしていた。1500年頃から火入れ(=低温殺菌)をして酸敗を防いでいた。また、米を蒸してその上に椿の灰を振りかけておき、酵母を採取していた。アルカリの強い灰をかけると雑菌が死んで酵母だけが残る。この方法で採取した麹を種麹として飼育し発酵食品製造業者に供給する種麹屋が数百年にわたって日本の伝統的食文化を支えている。(小泉武夫『麹カビと麹の話』光琳)
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筆者も何度か稲麹に出会っている。写真は2017年10月24日、イセヒカリの穂。
