2026年07月17日(金)

コラム・エッセイ

又 睦月(一)

随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)

 令和8年元旦は美しい日の出で幕を明けました。「元」は初めて、「旦」は地平線上の朝日の形を示していると言われます。人々が朝日に向かって拝む姿は神々しいです。児玉神社に初詣。おみくじは「末吉」。「つつしんで事を行え」とありました。謙虚に生きたいと思います。

 5日は「小寒」。寒の入りです。7日は五節句の一つ「人日」。七種類の若菜を入れた粥をいただいて今年の息災を願いました。「松の内」はふつう7日まで。地方によっては15日までという慣習もあります。門松や注連飾(しめかざ)りが取り払われると正月気分が薄れます。学校も職場も本格始動です。

 初春や老いを諾ひあらがわず  大串 章

 元日の新聞には俳壇、歌壇選者の新春詠が掲載されます。朝日俳壇選者の一句。76度目の春を迎えた身には作者の思いがうなずけます。身体の衰えはどうしようもなく、あるがままに「一日一日を大切に」の心境です。

 正月は全国紙、地方紙とほとんどの新聞に目を通します。社説、コラムをはじめ、新春企画が興味深いです。編集にも力が入っていて読み応えがあります。広告紙面も充実、とくに苦戦している出版社は言葉や読書について考えます。

 岩波書店は「大切な本が、一冊あればいい。」として「生きててよかったんだ、生きていいんだ、というふうなことを、子どもたちにエールとして送ろうというのが、児童文学が生まれたきっかけだと思います。」(宮﨑駿『本へのとびら』(岩波新書))と伝えます。今年100周年を迎える集英社は「100年?まだまだ若造ですから。」として「キミの胸が張り裂けるようなワクワクを。この世界がひっくり返るほどのドキドキを。まだ誰も知らない『おもしろい』があるはずだ。」とのメッセージです。

 「幸福」って何だろう?

 このように問いかけるのが三省堂。ことばを見つめ続けて、145年。「幸福」とは「現在(に至るまで)の自分の境遇に十分な安らぎや精神的な充足感を覚え、あえてそれ以上を望もうとする気持をいだくことも無く、現状が持続してほしいと思うこと(心の状態)。」(新明解国語辞典第八版)。斬新な解釈です。AI(人工知能)の時代だからこそ言葉を鍛えます。

 庵買うて且うれしさよ炭五俵

 草庵を手に入れ、そのうえ炭の備えも。正月を迎えた、与謝蕪村のささやかな幸せの一句。胸に沁みます。

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