2026年05月18日(月)

コラム・エッセイ

又 弥生(一)

随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)

 雪が解け、大地がゆるみ始めるとともに、冬ごもりしていた虫たちが土の中から這い出してきます。5日は二十四節気の「啓蟄」。春の陽気に誘われて人間たちも動き始めます。笠戸島や上関で満開の河津桜を楽しんだ人も多いでしょう。

 花ひらく春。鳥うたう春。吹き渡るそよ風さえもきらきらと光るように感じます。「風光る」。夏の「風薫る」と対比されます。感覚的に捉えた美しい言葉です。三寒四温を繰り返しながら春はやってきます。冷え込んだ後の穏やかな春風は希望をもたらしてくれます。

風光りすなはちもののみな光る  鷹羽 狩行

 この季節になると、イルカの「なごり雪」(1975年)や松任谷由実の「春よ、来い」(1994年)がテレビやラジオから聴こえてきます。どこか哀愁を帯びていて懐かしいです。

 春よ 遠き春よ
 瞼閉じればそこに
 愛をくれし君の
 なつかしき声がする

 「春よ、来い」の一節を口ずさめば歌に魅せられた若かりし頃の思い出がよみがえります。

 3月11日。平成23年(2011)の東日本大震災から15年の歳月が流れました。世界最大規模のマグニチュード9、死者は2万人を超える地震、津波の被害に加えて、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故が重なり、近隣市町村の避難がいまなお続いています。

 NHKの東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」は翌年3月に発表されました。作詞は岩井俊二、作曲は菅野よう子。〈真っ白な雪道に/春風香る/わたしはなつかしい/あの街を思い出す‥〉。歌い続けることで復興支援につなげます。15年経った今年。未来へつなぐうたが「ゆず」に託されて震災伝承ソング「幾重」が生まれました。〈明日の空に手を伸ばす/振り返る昨日は遠い/応える声はなく風に消えていた‥〉。ゆずの二人は東北各地を訪ねて被災者の深い思いを「幾重」に重ねました。作詞、作曲は北川悠仁。感極まります。

 大正12年(1923)9月1日の関東大震災。平成7年(1995)1月17日の阪神・淡路大震災。数多くの犠牲者を出しました。悲しみを乗り越えてそれでも人は生きてきました。

 初蝶来何色と問ふ黄と答ふ  高浜 虚子 

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