2026年10月23日(金)

コラム・エッセイ

又 水無月(二)

随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)

 昔から習い事を始めるのは「6歳の6月6日がよい」とされました。歌舞伎や能、狂言などの伝統芸能を中心に稽古始めでこの日に芸事を始めるのを「吉」とする習わしがありました。現代では「楽器の日」「いけばなの日」「邦楽の日」といったさまざまな記念日に定められています。

 6日は二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」でもありました。芒(のぎ)とは稲や麦の穂先のとがった部分のことで、穀物の種をまく時節と解されます。21日の「夏至」に向かって日を重ねます。山口県は九州北部とともに4日梅雨入り。雨の季節になりました。

 あぢさゐの色のはじめを雨が描く  伊藤伊那男

 紫陽花は花の色の移ろいやすいところから七変化という別名があります。青色や赤色の濃淡が美しいです。花の開き始めの色は黄緑色がかっていて、それは雨が描いてこの色になったという一句です。発想が素敵です。

 雨のおとが きこえる
 雨がふっていたのだ。
 あのおとのように
 そっと
 世のためにはたらいていよう。
 雨があがるように
 しずかに死んでゆこう。

 30年の短い生涯をキリスト信仰に捧げた詩人八木重吉の「雨」。多田武彦作曲の男声合唱組曲『雨』の最終曲で静かな祈りとともに歌われます。男声合唱団メールソレイネが昭和61年(1986)3月22日、徳山市文化会館(現周南市文化会館)で開催した第1回定期演奏会で披露。私も一団員として歌い、胸からこみあげるものがありました。

 名曲は歌い継がれます。混声合唱組曲『水のいのち』。高野喜久雄作詩、高田三郎作曲のこの作品は昭和39年(1964)以来、どれほど歌われてきたことでしょう。女声合唱団あい(野村文子代表)は第30回記念定期演奏会を7日、周南市文化会館で開催。周南市出身の詩人まど・みちおの作品「にじ」や「サザンカ」などを歌ったあと、最終ステージで『水のいのち』を取り上げました。

 指揮は西岡茂樹、ピアノに山城麻衣、ヴァイオリンに内山優子、弦楽として周南フィルハーモニー、それに男声合唱有志が加わり、雨、水たまり、川、海、海よ、と続く自然の壮大なドラマをホールいっぱいに響かせました。
 コロナ禍を克服、定期30回の金字塔を飾るにふさわしい舞台に感動の輪が広がりました。拍手喝采!

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