2026年04月27日(月)

コラム・エッセイ

松村久さん逝く

翠流

▼周南市銀座のマツノ書店の店主、松村久さんが10日、85歳で亡くなった。葬儀の翌日、店に寄ってみると、開いていた。休店しないのは故人の遺志だという。

▼1974年、41歳の時に始めた出版事業は、亡くなるまでに290点を世に出した。明治維新関係の貴重な復刻本も多かった。その社会的、文化的貢献に対して2007年、菊池寛賞が同店に贈られた。この年の受賞者は作家の阿川弘之、歌舞伎俳優の十二代市川団十郎、落語家の桂三枝(現文枝)、俳優の小沢昭一、講談社「全国訪問おはなし隊」、そしてマツノ書店だった。

▼松村さんは2年前、当時理事を務めていた児玉源太郎顕彰会の機関誌「藤園」の創刊号に「古書店店主として児玉源太郎の本を復刻」と題して寄稿している。

▼その中に「児玉は高杉、久坂に匹敵する人物であり、特に日露戦争においては日本の将来を左右する大きな合戦を勝ち抜き、つまり仕事では誰にも負けなかった。/もっと『周防の地に児玉あり!』と褒められてもおかしくないと思うのだが?」とある。松村さんこそ、もっと高く評価されるべきだったのではと思う。

▼1989年の著書「六時閉店―地方出版の眼」で、午後6時に閉店し、古書店が集まる百貨店やスーパーの即売会にも参加しない理由として、山口県史料の目録販売と年間6〜7点の出版を手掛けており「これこそ自分の独断場」と記していた。

▼そのための6時閉店で「これまで通り『のんべんだらり』の商法では、古本屋も生きて行けない」と結んでいる。仕事に対するこの厳しい姿勢。「徳山にマツノ書店あり」と言わしめた偉業には及ぶべくもないが、その姿勢に学びたい。

(延安)

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