コラム・エッセイ
(28)アサギマダラ
補 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
10月22日、今年も裏庭で咲いているフジバカマの花にアサギマダラが飛んできた。例年と同じように、最初の日はわずか一頭であったが、次の日には時間が過ぎるほどにその数を増していき、昼前には6頭になった。
まるで先遣隊(せんけんたい)がいるとしか思えないほどの絶妙なタイミングである。スマートフォンなどの連絡ができる手段を持っていないアサギマダラが、いったい、どのようにしているのか不思議でならない。
さらに、我が家の狭い裏庭は、家屋の陰に隠れた分かりにくい場所にある。どこからも見ることができる美しく整備された公園とは特段の違いがあるにもかかわらず、アサギマダラは見つけ出し立ち寄ってくれている。
アサギマダラがどのようにしてフジバカマを見つ出しているのかは分からない。緻密な計画を持っているのかもしれないし、行き当たりばったりなのかもしれない。あるいは、強力な嗅覚を持っているのかもしれない。
しかし、アサギマダラの寿命は羽化した後の4、5カ月ほどと言われている。当然、親から教わることができるはずもなく、すべてを自らの力で解決する必要がある。そこには、甘えが入り込む余地など決してない。
アサギマダラの行動のすべてが明らかになっているわけではない。目の前にいるアサギマダラがどこで生まれて、これからどこに行くのか。そして、どこで命の終わりを迎えるのかなど、不明な点も多く残されている。
そのように考えると、すべてのアサギマダラが与えられた命を精一杯生きているように思えてくる。ここから先も、多くの困難を無事に乗り越えていくことを願うとともに、出会うことができたことに深く感謝したい。
最近、フジバカマを大規模に栽培する場所が増えている。アサギマダラを地域の活性化に利用するのが目的らしいが、それがアサギマダラにとって望ましいことかどうかを、冷静に考える必要があるのかもしれない。
