コラム・エッセイ
(29)二十日余りの月
補 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
肌寒い夜が明けて少し過ぎた頃に、何気なく空を見上げてみた。すると、そこには、雲一つない晴れ渡った青い空が広がっていた。その青空の中に、まるで消えて行くかのように薄く白い有明けの月が浮かんでいた。
有明け(ありあけ)とは、特定の地名を指す言葉ではなく、夜が(明け)ても空に(有)ることを表している。そして、有明けの月は、旧暦の十六日以後に夜が明けても空に残っている月を指す言葉として使われる。
有明けの月は、「朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に ふれる白雪」と百人一首でも歌われているほど有名である。そこにあるのは、何気ない自然の移り変わりに対する日本人の豊かな感性であろうか。
その豊かな感性は、特定の日にちを指していない有明けの月以外にも月の満ち欠けや月齢によるものにも向けられている。たとえば、月が見えない時の新月(しんげつ)や新月から3日目ごろの細い月の三日月がある。
さらに、右半分が光っている上弦の月、十三夜月、小望月(こもちづき)、十五夜月、十六夜月(いざよいづき)、立待月、居待月、寝待月、更待月(ふけまちづき)、下弦の月、三十日月(みそかづき)などがある。
詳しく調べてみると、月齢の0日から29日までのほとんどの日にそれなりの呼び名がつけられていた。0、1、2、6、7、8、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、25、28、29の合計21日に及んだ。
特に、月齢15日の満月の前後に集中していることから、月の明かりがいかに生活に関係していたかを知ることができる。時には、電気の便利さから離れて、月明かりでの生活に思いをはせることも必要かもしれない。
月齢20日の呼び名である二十日余りの月には、下弦の半分より少し多くの部分に光が当たっていた。やがて、月齢の21日をむかえると左半分が光った下弦の月となる。下弦の月には、弓張月、弦月、半月の別名もある。
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