コラム・エッセイ
第二十三手「子供同士の10秒碁③」
「碁」for it 小野慎吾前回までのあらすじを少し紹介します。囲碁の練習方法で1手10秒以内にお互いに打ち続けていくという過酷な対局方法があります。その対局をSちゃんとMちゃんという子供同士が3回対局しました。1、2回戦はSちゃんが対局内容で勝利を確実なものとしていましたが、最後は10秒以内に着手が出来なく、1、2回戦とも時間切れ負けになりました。最後の3回戦は、Sちゃんは「怒り」だけで打ったため、対局内容が悲惨な事になり、時間以外の実力でも負けました。
負けた瞬間に、Sちゃんは大泣きをして涙が止まらなくなりました。本来なら打った石を片付けなければいけませんが、悔しさの余り、「私、帰る!」といって泣きながらダッシュで家に帰りました。負けて泣く子は囲碁がかなり強くなるというのが持論ですが、ここまで悔しがるとは思っていなかっただけに衝撃を受けました。ですが、先生という立場からは大変うれしく感じる事でした。勝ったMちゃんはぼそっと「私、負けた方が良かったかな?」と言っていましたが、それは違うと教えました。わざと負けるのは相手のためになりません。
囲碁が面白い理由の一つに、相手も全力を尽くしてくれるのもあります。毎日のように打っていると対戦相手の実力はほぼわかります。そのため、急に弱くなったりすると明らかに手加減されているのは対戦相手に伝わります。「碁打ち」にとってこれは屈辱になります。負けても全力で打って負けたいと思いますし、相手が強いからこそ次に繋がる学びもあります。
その後、負けたSちゃんは自発的に囲碁の練習をよくするようになりました。この出来事自体は昨年の12月に起きましたが、それから目を見張るくらい強くなり、2021年1月時点ではMちゃんに勝ち越す事の方が多くなりました。改めて囲碁が強くなるためには「悔しい」という要素は重要だと感じます。
最近は、逆にMちゃんの方が「Sちゃんに勝つためにはどうしたらいい?」という質問が増えて良いサイクルに入ったと感じています。Mちゃんも実は負けると「悔しい」という感情を出します。Sちゃんと違い「怒り」ではなく、「悲しみ」で表現します。特に明るいMちゃんは負けが続くとしんみりとした表情になり悲しみがこちらにも伝わります。
今まではSちゃんがMちゃんを追いかける図式でしたが、今後はむしろMちゃんが追いかける立場かもしれません。一緒に強くなって欲しいと願うばかりです。「ライバル」という存在は有難いと感じます。普段は両者共にお互いを「親友」と呼び合います。
また何か出来事がありましたらご紹介します。
悔しさを乗り越え「碁」for it(頑張る)!
先輩と後輩の対局
