2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(10)マンガン山

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 かって、光市浅江にはマンガン山と呼ばれていた山があった。もちろん、正式な名前ではなく、マンガン鉱石を採掘していたことから名付けられた俗称であったが、いつの間にかその名前を知る人が少なくなってきた。

 光市教育委員会発行の『未来をひらく 光市の歴史文化』の「近代の産業」では「マンガン鉱石採石場」として、操業の期間や従業員の人数、坑道の様子など詳しい内容とともに貴重な坑道内の写真が掲載されている。

 その写真に魅了されて、5年以上前に探索したことがある。その時に坑口を見つけることができたが、資料の写真とは微妙な違いがあるように感じていた。さらに、証拠となる関係鉱石を見つけることができなかった。

 前回からかなりの時間が経過しているが、改めて真偽のほどを確認したいと思った。今回は、前回の貴布祢コースではなく、鉱石を運ぶためにワイヤーロープ(索道)が張られていたと思われる谷沿いを登ることにした。

 地元の人からマンガン山に関する有力な情報を聞くことができたので、さっそく参考にして山に入る。すぐに道が途切れて、水害の影響と思われる大量の石くれが現れる。その石くれの中を慎重に高度を上げていく。

 やがて、急斜面にマンガンらしき転石や岩脈が現れ始める。その期待を持たせる光景は、前回の登山コースでは見ることができなかったものである。しかし、残念ながら、索道の痕跡を確認することはできなかった。

 そして、突然、行く手を阻むかのように巨大岩盤が目の前に現れる。その根もとには、黒い空洞が口を開けている。おそらく冬期でなければ出合うことができなかったであろう感動の風景に、しばし時の流れを忘れる。

 坑口からは、資料で見た坑道が奥深くまで続いていた。さらに、坑口周辺でマンガン鉱石を採集することができたことから、この場所が貴重な産業遺産であるマンガン鉱石採石場であることに間違いないと思われる。

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