コラム・エッセイ
(18)右田ヶ岳(みぎたがだけ)
再々周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
「右田ヶ岳に登ってみよう」と友人から誘いがあった。いつも鉱山などの探索に同行してもらっている友人からの誘いを断るわけにはいかない。思い切って、一度も登ったことがない右田ヶ岳に挑戦することにした。
登山が嫌いなわけでは決してない。どちらかと言えば、好きな方と言えるであろう。若いころには、県内外の高い山にも登っていたが、体力に自信が持てなくなった最近では、近くの低い山に登る程度になっていた。
防府市にある右田ヶ岳は、低山ではあるが、それでも高度は400メートルを越える。さらには、急斜面の山肌には巨岩や奇岩が立ち並ぶかなり難度が高いと思われる山である。無事に登ることができるかどうか不安を感じる。
登山コースを調べてみると、比較的登りやすい塚原コースや摩崖仏がある起伏の激しい天徳寺コース、山の尾根を伝う塔之岡コース、ロッククライミング気分が味わえる初心者向きではない勝坂コースなど多くがある。
あいにくの雨が止むのを待って、無料の駐車場が完備された塔之岡から上右田Cコースをたどりながら山頂を目指した。渓流にかかる橋は必見であったが、その後は足がすくむような厳しい岩場が幾度となく続いた。
それでも、樹木に覆われていない場所では、高度の変化を身を持って感じることができた。その臨場感こそが、多くの人を魅了して止まない理由の一つになっているのであろう。開始から1時間50分で山頂に到着した。
これまで、国道2号を走る自動車や山陽新幹線の車窓から何度も目にしてきた馴染み深い右田ヶ岳であったが、なぜか登ることなど一度も考えたことはなかった。その過ちの大きさを、山頂に立つことで気づかされた。
雨があがりすっかり晴れ渡った山頂からは、防府市内の風景が手を取るように広がり、遠くには九州が見えた。直下を走る山陽新幹線や防府北基地から飛び立つ航空機を眺めながら、至福の時間を過ごすことができた。
