2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(21)招き猫

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 朝、カーテンを開けて目に入ったのは、近くの家の屋根上にいる野良猫の姿であった。猫好きの一人としては、猫が屋根の上にいるぐらいでは驚くことはないが、そこでいったい何をしているかについては興味があった。

 しかし、興味を持ったところで、おそらく猫にはたいした理由があるわけではないだろう。何の役にも立たないのであれば人間の勝手な詮索は止めて、気まぐれな猫の行動を密かに楽しんだほうが良いかもしれない。

 屋根の最上部にあたる大棟の上に座っている猫の姿は、遠くから眺めれば「唐獅子」のようにも見えなくはないが、眠たそうな目では幾分迫力に欠ける。それよりも、「猫に小判」の方がふさわしいと言えるであろう。

 「猫に小判」のことわざの意味は、価値を知らない猫に小判を与えても意味がないことである。ことわざは屋根の上にいる猫には関係ないように思えるが、猫が座っている鬼瓦をよく見るとその関係がわかってくる。

 その答えは、鬼瓦の図柄となっている「打ち出の小槌」にある。振ればほしいものが出てくる小槌から、小判が出てきても不思議ではないはずである。小判が出てくれば、めでたく「猫に小判」に結びつくことになる。

 猫と小判が揃えば、「招き猫」に変身することができる。江戸時代に誕生したとされる「招き猫」は首輪に鈴をつけたものであったらしいが、時代ともに、全国各地でいろいろな物を持った「招き猫」に変化していく。

 多くの「招き猫」がある中でも、小判を持ったものが一般的であろう。小判には、開運や招福などの文字、千両や万両などの金額が描かれているものがある。いずれの小判にも、財運を招く効果があるとされている。

 「招き猫」の元になったのが3色の毛が生えた三毛猫であったとも伝えられている。屋根の上の野良猫も三毛猫であることから、いつの日にか、「招き猫」となって「財運」や「幸運」を招いてくれるかもしれない。

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