2026年10月23日(金)

コラム・エッセイ

(22)霧雲(きりぐも)

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 6月17日ごろ、ついに山口県を含む九州北部が梅雨入りした。なんと、平年より13日遅く、昨年よりも19日遅い梅雨入りであった。中国地方は、22日ごろで平年より16日遅く、昨年よりも24日遅くなった。

 6月17日の梅雨入りは、統計を取り始めた昭和26年以降では、4番目に遅いと新聞やテレビなどで報道されていた。上空を流れる偏西風の影響で、梅雨前線が北上することができなかったことが遅れた理由らしい。

 今後心配されるのは、線状降水帯による大雨被害であろう。梅雨入りが遅れたことによって、海面が照らされる時間が長くなり水温が上昇する。

 そのことによって、線状降水帯の発生を強める危険があると予想される。

 今年の暦を開いてみると、6月10日に入梅(にゅうばい)の文字が書かれていた。入梅とは、梅雨に入ることであり、節分や八十八夜、土用などと同じように二十四節気を補助するために加えられた雑節の一つである。

 多少ややこしいが、入梅は暦の上での梅雨入りであり、気象庁が発表する実際の梅雨入りとは異なるものである。いずれの梅雨入りも、田植えなどの農作業にとっては準備などの目安となる非常に重要な日に違いない。

 梅雨の代表的な風景といえば、田植えと言えるであろう。一面に水が張られた田んぼでは、トラクターによって苗が植えられていく。機械化された最近の田植えには、昔のような風情が感じられないのが残念である。

 以前、田んぼを作っている人から聞いた話では、近所の住宅からカエルの鳴き声がうるさいと苦情があるという。田んぼのそばに家を建てた人からの苦情に、怒りというよりも、田んぼを作っていく気力を失ったらしい。

 それが、田んぼの多くが宅地となって消えていった理由の一つになったのかもしれない。なんともやるせない気持ちになるが、誰に責任があるわけではないだろう。梅雨の激しい雨の後、近くの山には霧雲が出ていた。

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