コラム・エッセイ
(42)蒸気機関車(2)
再々周南新百景 佐森芳夫(画家)ついに蒸気機関車が宙に浮かんだ。感動の時をむかえたのは、10月22日に作業が開始されてから28時間以上が過ぎた翌日の13時半ごろであった。2日間に渡って待ち続けた結果、決定的な瞬間を目にすることができた。
今回の蒸気機関車の別場所への移動は、新しい蒸気機関車プラットホームを造成するためだけではなく、老朽化した車体の改修や断熱材として使用されていた有害物質の除去作業などを安全に行うためのものであった。
当然ながら、宙に浮かんだ蒸気機関車を見るのは初めてである。しかも、蒸気機関車の検査が行われていた工場内ではなく、屋外の公園である。よもや、こんな場所で貴重なシーンに出会えるとは思ってもいなかった。
動物園が休園日となっていた22日には、雨が降る中、蒸気機関車を移動するための準備作業が行われていた。大型クレーン車には転倒防止のため重りが載せられ、そばには蒸気機関車を運ぶトレーラーが待機していた。
11時半には、蒸気機関車に連結していた炭水車が切り離された。朝から続けられていた本体をボイラー部と車輪部とに分割する作業も順調に進み、13時すぎには、ボイラー部をクレーンで引き上げる作業が始まった。
雨の降る中、傘をさしながら歩道に立ち続けてきた疲れが一気に期待に変わった。しかし、分離できていない個所があるらしく、引き上げ作業は一旦中止となった。その後、進展がないまま移動は翌日に繰り越された。
23日には雨も上がり、曇り空のもと朝から分離できていない個所をアセチレンバーナーで切断する作業が進められた。運転室の下にある火室、灰箱やシリンダー部上にある主蒸気管、煙室などに火花が飛び散っていた。
そして、ついに、ボイラー部が慎重に引き上げられた。ワイヤーロープにつられた車体は、期待していたほど天高く舞い上がることはなかったが、歓喜のうちに、待機していたトレーラーに向かって移動していった。
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