2026年10月23日(金)

コラム・エッセイ

(45)まいわし煮干

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 イリコが苦手であった。正しくは、ダシをとったあとのイリコと言うべきかもしれない。本来であれば、ダシをとったイリコは取り除くべきものであろうが、みそ汁や煮物などにそのまま残してあることが多かった。

 ダシをとれば味がしないのは当然のこととあきらめたとしても、イリコの見つめているような白い目や黒く固まったハラワタが、苦手であった。取り出せば済むことのように思うが、それができる積極性に欠けていた。

 当然、イリコに何の責任があるわけではない。市販されている「瀬戸内産いりこ」の袋の裏面には、おいしいだしの取り方が図入りで書かれている。それによると、最後にはイリコをすくい取るように説明があった。

 説明通りにイリコをすくい取らなかったのは、おそらくカルシュウム不足で苦労していた時代からの習慣があったからであろう。そこからも、イリコが実生活と深く結びついていたことをうかがい知ることができる。

 「瀬戸内産いりこ」の袋を見直してみると、商品の名称が煮干魚類となっていた。イリコではなく煮干となっているのは、西日本ではイリコ、東日本では煮干という呼び方の違いによるもので、二つは同じものである。

 さらに、気になる魚の種類については、原材料名「かたくちいわし(瀬戸内海産)、食塩」と記載されていた。カタクチイワシの特徴は、名前の由来にもなったと言われる口が片方にしかないように見えることである。

 そのカタクチイワシは一般的な原料とされているが、それ以外にも、マイワシやウルメイワシ、キビナゴなどが使われることもある。おそらく、カタクチイワシ以外は食べたことがないので、強く興味を引かれた。

 そこで、「山口県産 まいわし煮干」を買ってみた。長門産の真いわしは、カタクチイワシと比べるとひと回り大きくて黒い感じがする。適度の硬さがあって、「自然の旨味をたっぷり含んだ」非常に良い味がした。

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