2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(54)湯野自然石板碑

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 周南市湯野にある「湯野自然石板碑」については、そばに立てられている説明板に詳しい内容が書かれている。それによると、3基とも花崗岩製で、塔頂から20~30cm下方に梵字種子(しゅじ)があるとされている。

 梵字(ぼんじ)とは、古代インドの言語を表記するための文字であり、一文字で神仏を表した梵字を種子という。奈良時代に中国を経由して仏教とともに日本に伝わってきたとされるため、仏教とのつながりが強い。

 板碑にあるとされる梵字種子であるが、花崗岩の風化が進んでいるためであろうか、3基とも確認することが難しくなっている。何度か足を運んでいるうちに、光線の角度によってそれらしく見えることに気づいた。

 しかし、それらしく見えたところで、記されていたであろう内容を正確に読み取ることはできないのであれば、意味はないといえる。そこで、当然のことではあるが、説明板に書かれていることを参考にすることにした。

 説明では、板碑が造立されたのが応永12年(1405)となっている。その年は、大内義弘が室町幕府に対して起こした反乱「応永の乱」から6年後にあたる。それにより大内氏は6カ国から2カ国の守護になっている。

 また、3基とも同年次に薬師三尊として造立されたものと考えられると記されている。薬師三尊とは、本尊の薬師如来と脇侍の日光菩薩、月光菩薩のことである。それぞれの種子を当てはめてみると、そう見えてくる。

 県道27号山口徳山線のすぐそばという人目につきやすい場所にあることで、親しみが持てるのは当然としても、周辺に関係すると思えるものが見当たらないことから、なぜこの場所にあるのかという疑問がわいてくる。

 偶然この場所にあったとするのは、あまりにも安易すぎるような気がする。もしかすると、地元の人々に「石仏さん」と言われて親しまれてきたと書かれていることに、解明の糸口が秘められているのかもしれない。

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