2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

(67)屋島

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 少しばかり前のことになるが、四国の高松に行く機会があった。その時、念願であった屋島の山上に登ることができた。本来であれば歩いて登りたいところであったが、時間的な理由から今回はバスに頼ることにした。

 JR屋島駅からシャトルバスに乗ると約20分で山上の駐車場に到着する。屋島は、遠くから見てもわかるように、飛びぬけて高い部分がなく山というよりも台地と言った方がふさわしいような珍しい地形をしている。

 駐車場のすぐそばにある四国霊場八十八箇所、第84番札所の屋島寺でお参りを済ませて展望台に足を進める。展望台からは、高松市内や瀬戸内海の島々などが望める。その中に、超高層の高松シンボルタワーがある。

 その高松シンボルタワーの29階には展望フロアがあり、屋島の全景を望むことができる絶好の場所となっている。コーヒーを飲みながら、ゆっくりと過ごすことができるが、お遍路文化であろうか無料でも利用できる。

 眼下には高松港に出入りするフェリーや女木島(めぎじま)、男木島(おぎじま)、豊島(てしま)、小豊島(おでしま)、大島(おおしま)、小豆島(しょうどしま)、屋島(やしま)などの瀬戸内の島々が広がる。

 屋島と言って思い起こされるのは、やはり平家物語であろう。都を追われ各地を転々とした末に、ようやくたどり着いたのがこの屋島の地であったという。しかし、源義経に襲われることで「屋島の戦い」が始まる。

 優位と思われた平家であったが、戦いに敗れて、ふたたび瀬戸内海を逃げ迷うことになる。瀬戸内海周辺には、その時の戦いに敗れた者たちが、追っ手から逃れるために隠れ住んだとされる伝説が多く残されている。

 その一か所に、山口県の東部を流れる錦川の上流域があることから、屋島との深い結びつきを感じる。それは、後年になっての憶測や創作などによって流布されるようになった伝説とは一線を画すべきものであろう。

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