2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

(69)二位ノ浜

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 長門市日置(へき)にある二位ノ浜は、壇ノ浦の戦いで安徳天皇とともに入水した二位の尼の遺体が流れ着いたとされる砂浜である。そのことを、しのぶかのように白い砂浜の片隅に「二位局之碑」が建てられている。

 しかし、二位ノ浜という地名の由来について、『日置町史』や『防長風土注進案』など多くの資料を調べてみたが、平清盛の妻であり安徳天皇の祖母にあたる二位ノ尼と関係するものを見つけることはできなかった。

 ところが、『防長地下上申』には、二位ノ浜について「格別由来無御座候」と書かれている部分がある。あえて、格別の由来がないと書かれているところに、本来の由来とされるものが隠されているように感じられた。

 このような、あいまいな状況を発生させた背景にあるのは、源平合戦という特殊性であろう。かなり広範囲な地域が長期間にわたって戦火に巻き込まれたことによって、その影響が想像をこえて広がったに違いない。

 滅びゆくことを薄々感じながらも、何とかして生き延びるための策略が着々と進められていたことは容易に想像できる。ある時には、それが敵をあざむくための身代わりや偽装であったことが混乱を深めたと思われる。

 二位ノ浜の言い伝え以外にも、広島県の宮島にある有之浦の海岸には二位の尼の遺体が流れ着いたとされる二位殿燈籠が残されている。宮島が平清盛ゆかりの地であることを考えると、余りにもできすぎの感が強い。

 夏の時期には海水浴を楽しむ多くの人が訪れる海水浴場としても、二位ノ浜は有名である。切り立った断崖の中に突如として現れる白い砂浜に、海水浴やキャンプ以外にも不思議な魅力を感じる人は多いに違いない。

 また、二位ノ浜は、昭和41年(1966)にハマオモトが自生する北限地として山口県の天然記念物に指定されている。夏から秋口にかけて海岸の砂地に別名「はまゆう」が白い花を咲かせている風景は、なぜか胸を打つ。

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