2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

(71)キリギリス

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 毎年のことになるが、この時期になると狭い家庭菜園が草におおわれた状態になる。その一番の原因は、やはり暑さというべきであろう。連日のように続く「熱中症警戒アラート」が、やる気をさらに奪い取っていく。

 しかし、あまりの惨状に、ついに重い腰をあげざるを得なくなった。思い切って、勢いよく茂った草を引き抜くことにした。先延ばしにしてきたことが、何倍もの労力となって返ってくる。まさに愚の骨頂といえる。

 草むらから「ギィーー、ギイーー」と鳴いている虫の声が聞こえてきた。ときには「チョン」の声が入るので、「チョン、ギース」と鳴いているようにも聞こえる。その正体は、誰もが知っているキリギリスである。

 いまさら言うまでもなく、キリギリスは鳴いているのではない。なんとも不思議であるが、翅(はね)と翅をすりあわせて音を出しているといわれている。さらに、この音を出しているのは、オスに限られるらしい。

 その音を出す目的の一つがメスを呼び寄せるためというのも、ロマンにあふれている。かっては、その音を楽しむために、虫かごに入れて売られていたこともあったらしいが、いつのまにか、消えていったようである。

 現在では、虫の鳴き声ですら、騒音にされることがあると聞く。一生懸命に愛のメロディーを奏でているキリギリスを許すことができないのは、実に嘆かわしいことである。他者を容認することも、時には必要と思う。

 キリギリスの寿命は、数か月とされている。春に卵から孵化した幼虫は、脱皮を繰り返して夏ごろには成虫となる。成虫となったキリギリスは、交尾と産卵を行い子孫を残したあと、冬をむかえる前に寿命を終える。

 畑のそばに咲いたモントブレチアの花でキリギリスのメスが静かに休んでいた。イソップ寓話の影響からであろうが、怠け者として見られることが多いかもしれないが、そこには、噓に惑わされない真の姿があった。

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