コラム・エッセイ
(73)アカメガシワ
再々周南新百景 佐森芳夫(画家)「アカメガシワ」という木がある。けっして珍しい木ではない。ごく身近に生えている普通の木と言うこともできるが、実際にどれが「アカメガシワ」であるかを、正確に言い当てる人は少ないのではないかと思う。
あまり知られていない理由については、よくわからないというべきであろう。これといった特徴がないわけではない。たとえば、名前の由来となったと思われる赤色をした新芽は、美しく見えるだけでなくよく目立つ。
しかし、畑や空き地、道路脇などあらゆる場所で赤色の新芽を見つけることができたとしても、雑草と同じように生えているため草に間違えられることが多い。木であることに気づくのは、しばらくしてからである。
その成長の速さは驚愕に値する。まさに、気づかないうちにといった言葉や、あっという間にといった言葉がふさわしいほどの成長の速さである。雑草と間違えて放置していると、取り返しがつかないほど大きくなる。
取り返しがつかないほど大きくなる「アカメガシワ」であるが、その樹皮が胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの治療薬として使われていることはあまり知られていない。さらに、葉や種子は染料としても利用されるらしい。
その「アカメガシワ」の葉は、カシワの葉の代わりに食べ物をのせたり、餅を包むことに使われていたと言われている。おそらく、そのことが名前の由来になったと思われるが、周南市の周辺では使われてはいない。
「アカメガシワ」の木は、オスとメスがある雌雄異株(しゆういしゅ)であるが、その違いはよくわからない。なんとか、花をつけるこの時期に雄花をつけている雄株と雌花をつけている雌株とを区別するほかない。
そこで、雌花と雄花との違いを見分けようとして苦戦していたところ、あらぬことに気がついた。それは、かって公園の池でよく見かけていた愛らしいあるものの一部分が、雌花に多くついている珍しい光景であった。
