2026年09月08日(火)

コラム・エッセイ

(93)長者ヶ森

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 美祢市の秋吉台カルストロードを走っていると、石灰岩と草紅葉が続く風景の中に突如として木々の塊が現れる。あきらかに周辺から孤立しているかのように見える異質な風景こそが長者ヶ森と呼ばれる場所である。

 なぜか不思議な雰囲気を漂わせているその場所は、カルストロードを走りながら見ることができるが、自動車ではその場所に行くことができない。行くためには、長者ヶ森駐車場に車を停めて遊歩道を歩くほかない。

 と言っても、わずか5分程度の距離である。保守用の車が通る広い道を進んで行くと長者ヶ森の端に着く。そこが入口のようになっているので、そのまま森の中に入ることができる。中には、独特な空間が広がっている。

 多種多様な樹木が生育する原生林が長者ヶ森(ちょうじゃがもり)と呼ばれるに至った理由については、かってこの地に長者が住んでいたとする言い伝えが残っている。その長者の正体については、諸説があるらしい。

 長者とは金持ちのことであるが、長者ヶ森の中の祠(ほこら)が美東町鳶(とび)の巣にある前野家のものとされていることから、秋吉台周辺で栄えていた青景銀山や長登銅山などと関係していたものと考えられる。

 また、『山口の伝説』(角川書店)などによると、壇ノ浦の戦いから逃れた平家の武将であった大田芳盛とその家来が、大山と呼ばれた原生林のあるこの台地に住み着いて開拓し、次第に勢力を広げたとされている。

 ところが、三代目のころ一族の間で争いが起きたことなどから火事になり、大山も六日七夜の間燃え続け一帯が焼け野原になったという。今の森は、江戸時代になって子孫が先祖をしのんで居館跡に植えたとされる。

 いずれの言い伝えにも確証となるものはない。しかし、石灰岩と草紅葉が続く秋吉台の美しい自然を見ることができるのは、先人たちの努力のたまものである。その中に平家伝説があることを忘れないようにしたい。

LINEで送る
一覧に戻る
今日の紙面
山口コーウン株式会社

「安全で 安心して 長く勤められる会社」をスローガンに、東ソー株式会社等の化学製品を安全かつ確実にお届けしています。安全輸送の実績でゴールドGマーク認定を受け、従業員が安心して働ける環境と「15の福利厚生」で従業員の人生に寄り添っています。

東ソー

東ソーが生み出す多種多様な製品は、社会インフラや耐久消費財など人々の生活に役立つさまざまな最終製品に使われています。総合化学メーカーだからこそできる、化学の革新を通して持続可能な社会に貢献していきます。

サマンサジャパン

来院者の方へもっと目配り、気配りをしたい。物品の補充や搬送に時間を取られる・・・
サマンサジャパンでは医療従事者の方がより医療に専念できるよう、コンシェルジュ、受付、看護助手、清掃、設備など様々な業務を行っています。

株式会社トクヤマ

トクヤマは、電子材料・ライフサイエンス・環境事業・化成品・セメントの各分野で、もっと幸せな未来をつくる価値創造型企業です。