2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(95)穴森神社

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 『平家物語』の巻第八緒環(おだまき)には、維義(これよし)がおそろしき者の子である由来が書かれている。その内容は、『古事記』などの神様や神の化身が人間と結婚するといった神婚伝説と似たものである。

 娘のもとに夜な夜な通う男がいた。そのうち懐妊の身になった娘に、母が男がなに者であるかを聞くと、来るのは見るが帰るのは見たことがないと答えたので、帰るときにしるしをつけて行先をたどるように教える。

 そこで、衣の襟に針を刺し緒環(糸巻き)をつけて、帰って行くあとをたどってみると、豊後の国と日向の国の境にある祖母岳の中腹の岩屋に入っていた。娘は、ここまでついてきたので、出てくるように声をかける。

 中からは、普通の姿の者ではない、見ると仰天するに違いないので帰った方が良いと返事があった。娘がそれでもと答えると、ついに高知尾(高千穂)の大明神の化身である5丈(約15メートル)ばかりの大蛇が姿を現した。

 大蛇の喉笛には、針が刺さっていた。帰っていった娘は、やがて大蛇との子供を産む。産まれたのは男の子で、手足にあかぎれがあったので「あかがり大太」と呼ばれた。その五代目の子孫が、緒方三郎維義である。

 この中で、祖母岳の中腹の岩屋と書かれている場所が、大分県竹田市神原(こうばる)にある穴森神社とされている。穴森神社は、古くは池明神や池社と呼ばれ、神社の裏には水をたたえた池があったと言われている。

 さらに、その池の中には、大蛇が住んでいて御神体としてあがめられていたとされている。その後、池に穴が開けられ水が抜かれた。元禄16年(1703)には洞窟の中から大蛇の骨が発見されたとも伝えられている。

 ガラス張りの美しい拝殿の裏には下り階段があり、御神体の洞窟に行くことができる。また、洞窟の中に入ることもできるが、深い暗闇が広がっているので、洞内の灯りをつけたとしてもかなりの勇気が必要である。

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