コラム・エッセイ
(49)ツバメ(燕)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
「風雲急を告げる」という言葉がある。その意味は「事態が急変し、大事件が起きそうな様子となる」と『広辞苑』に書かれているが、その語源は文字の通り風と雲の動きからきたものとされている。
「過去最大級クラス」といわれた今回の台風10号が接近した時に見られた風と雲の動きが、まさに「風雲急を告げる」という語源に相応しいものであったように思えた。
その様子は今まで見たこともないほど大事件を予感させるものであった。空を覆い尽くす低くたれ込めた何組もの黒い雲の固まりが、近くの山に激突するかのような勢いで頭上を通過していった。
猛烈な突風が吹き荒れる中、周辺ではサイレンともうめき声とも違った不気味な音が鳴り続けていることが、すでに台風最接近の真っただ中にいることをいやがうえにも感じさせた。
身の危険を感じて家の中に入ろうとした時に、電線にとまる4羽のツバメを見つけた。親子と思われるツバメは、強風を恐れる様子も無く毛づくろいが終わるとつぎつぎに荒れた空に飛び立っていった。
おそらくは強風で舞いあがった餌を捕っているのであろうが、強風にあおられながらも空中を思いのまま飛びまわっている姿に、人間の無力さとともにツバメの身体能力の高さに感動すら覚えた。
ツバメは春に南方からやってきて、子育てをしながら夏を過ごしたのち秋になると帰っていく渡り鳥である。昔から「幸せを運ぶ鳥」との言い伝えがあり、ツバメが家に巣をつくると縁起が良いとされている。
「風雲急を告げる」状態にも動じることなく空を飛びまわるツバメに、学びたいことが多くあるような気がした。
