コラム・エッセイ
今年の初登山2018⑦
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修一足先に山頂に立ったが、後続の仲間たちも合流した。下界の昼食時間には少々早いが大休止を兼ねて昼ごはんだ。ありがたいことに伯耆大山(ほうきだいせん)の山頂には鉄骨造りの立派な避難小屋がある。雪が少なく小屋はほとんど出ているが、多い年は屋根まで届くような積雪に埋まっている。
ここはあくまで避難小屋なので、暖房などなく、決して暖かくポカポカ快適ではないのだが、顔を上げられないほどの烈風が吹きすさぶ荒天時には唯一身を守ることができる安全地帯となる。
北アルプスや八ケ岳などのメジャーな山域の一部では通年営業か年末年始には食事も出してくれる山小屋がある。登山者はお金と身の回り品だけの軽装で冬山に入ることができるが、ここはそんな訳にはいかない。たとえ日帰り登山でも予備の食料はもちろん、最低限の非常用装備は自分持ちが常識だ。
でも、多くの人が登ってくる週末などは不定期ではあるが、小屋番さんが登ってきて売店で飲み物や菓子類やインスタント食品などを販売している。きょうも正月登山客を見込んで営業をしている。
この時期に登ってくる人の多くは準備に抜かりはないはずだが、いったん荒れれば人智など及ばぬ冬山だ。そこに山のベテランでもある小屋番さんがいるというだけで心強い。敬意を込めてわずかでも売り上げに貢献しようとのぞき込むが、値段を見ると黙って後ずさりするしかない。
パーティーでの山行とはいえ、日帰りなら行動食のとり方や昼食の内容は個人の流儀が出てくる。ちょっとした小休止に無言でザックを下ろして行動食を口にする人もいれば、何もしない人もいる。これも経験によるもので、自分の体との駆け引きでコントロールしている。
学校の集団登山なら水分をとれとかエネルギー補給せよなど指示が出るのかもしれないが、お互いに工夫して自分流を見つけるのが社会人山岳会だ。
冷え切った体に湯気の立つカップめんは山では大ご馳走だが、氷のような水からお湯を沸かすには時間もガスも余計にかかる。一手間かけて下界で魔法瓶に熱湯を入れてくれば随分と省力化できる。
食べる最中の彼らのコンロにはすでに食後のコーヒー用のお湯が沸き始めている。横目で眺めながらせめて片づけくらいは遅れをとるまいと食べかけのおにぎりを急ぎ口に押し込む。
下山ルートは登ったルートの往復ではなく、5合目から分かれて元谷(もとだに)に下り、大神山神社に寄り道して初詣でをするというものだ。小一時間余計にかかるのだが、若者たちは真っすぐに下山するという。
「そんなに急がなくても…」と、言うと「最近の子育ては夫婦でするもんなんです」???「家で奥さんが1人で子どもの面倒をみているので、早く帰らなくては…」と返してきた。
登る最中には大物を演じ、彼らも気を遣って大げさにうなずいてくれた。今、彼ら若者の言動に返す言葉が見つからない。
黙って自分の半生を振り返る。
冬の大山避難小屋=多い年は屋根まで雪に埋まる
夏の避難小屋
大神山神社に初詣でに行く予定だったが…
