2026年06月20日(土)

コラム・エッセイ

東北急ぎ旅⑥

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 自分の目で見る被災地の様子を語るとすれば、すでに5年という年月が悲惨とか無残といった形に残るものを消しつつあり、復興の槌(つち)音が響く情景からだろうか。もちろん、家族を亡くしたり、家や仕事を失って途方に暮れる日々を送り、いまだに心の痛手を癒しきれていない多くの方がおられるのは承知しているつもりだ。

 それにしても目に飛び込んでくる工事現場のスケールには驚く。巨額の予算が費やされる復興工事は国家プロジェクトなのだ。山を削って宅地を造成し、その土砂を大がかりなベルトコンベヤーで低地に運びかさ上げ造成をしている。横方向から見るとまるで巨大ピラミッドを造るかのようで、大きな台形状に盛り土されている。

 重機がうなりを上げ、他県ナンバーの大型ダンプカーが走りまわる。総工費がどのくらいかは知らないが、完成のあかつきには坪単価は都会の超高級住宅地並みになるかもしれない。一納税者の立場で言わせてもらえば海に近い平地をわざわざ高台にするよりも、はじめから津波の届かない近くの山間集落に移住して暮らす方が効率的で無理のない気もする。

 少しばかり山に向かえば人口減少で悩む地区も多いはずで、そこに投資したほうがお互いに元気になれるような気がするのだが…。しかし、長年住み慣れた場所がよいからだろうか、人が集まる街が魅力なのだろうか。さまざまな思惑が絡んで始まった巨大工事なのだろう。

 海岸風景を見ても同じ思いがした。のどかな海辺の集落で、被災した建物などは片づけられているようだったが、大きなコンクリート製の構造物を造る現場を目にした。工場のようにも見えるが、どうやら巨大な防潮堤のようだ。これで一体何人の集落を守るというのだろう。

 もちろん、国家プロジェクトを批判するほどの論拠もなければ、使途を憤慨するほどの税金を払ってもいない。何の勉強もせずに見て思いついたままを無責任に書いた。その筋の人からお叱りを受けることは覚悟の上ではあるが、人智に限界はないのか、おごりはないのかと考えさせられた。

 最近は過去に例がないとか、かつて経験したことがないなど頭に“超”がつく自然現象が頻発している。「崩れない山はない」ともいうが、100年のスパンで見た時、さらに高い津波だって来るかもしれない。巨大盛土や穏やかな海岸にコンクリートの塊が鎮座するのを目の当たりにすれば、費用は二の次としても、本当に住民が望んだ形なのだろうかと疑問もわいてくる。

 まあ、いまさらだ。それで孫子の代、いや末代まで平和で安心して暮らせるならよいではないか。車窓からの景色を無言で眺め、これだけのことを発想できる賢者の頭脳に驚くと同時に、天は舌なめずりしながら次の機会をうかがっているのではなかろうかという不安な思いも半分。

大きなベルトコンベヤーで山を削った土砂で盛り土をする

巨大な防潮堤=何人の集落を守るのだろう

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