コラム・エッセイ
東北急ぎ旅⑪
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修地元の皆さんにセッティングしてもらった交流会の会場に向かう前に、五葉山のふもとの日帰り温泉施設で一風呂あびて臨戦態勢に切り替えることにする。ツツジやシャクナゲには少々早かったものの、それらの開花期にはさぞや見事であろう景観を夢想し、その余韻が覚めぬままにつかる、ここ、五葉温泉も良い。
仮眠しながらとはいえ、他人を乗せての長距離ドライブは緊張の連続だった。やっと解放されて一気に「まったりモード」になってしまった。
ほぼ貸し切りの大浴場の窓から午後の晴れ渡った青空に浮かぶ山々を眺める。山暮らしの田舎者なので山を眺めて特別に心が動きはしないが、遠路、異郷の地まで駆けてきた感慨にふけると、ますます気分は夢心地となり、窓外の山が霞んで見えてくる。
ついでに湯上りに一杯だけと生ビールをあおれば、さっきまでの臨戦態勢に切り替えるなどという意気込みはかけらも残らない。
夢見心地で後部座席に身を沈め、どこをどう通ったのかもわからないまま交流会の会場の居酒屋に到着。すでに予行演習も終わり、初対面の人たちの中に押されるように潜り込んでも緊張感はない。注がれるままに杯を重ね、何の話をしたのかもさして記憶にない。
ただ、Mさんがボランティアとして何度も訪れては復旧の手伝いをしていることへの感謝の言葉と、山口から車で夜通し走ってきて「さあ、何をしよう」と休む間もなく動き続け「疲れた」という言葉を聞かなかったという伝説的な話題は大いに盛り上がった。着く早々に風呂につかり、湯上がりに一杯ひっかけて来た身では返す言葉もなく、うなずくことさえ恥ずかしい。
それと、生死に関わる災害に遭遇した時、生き抜くための「したたかさ」といったものも必要なんだ、と、参集の皆さんが語られていたことも忘れない。
「したたか」といえば若干のクセを抱えた人の行動を想像してしまうが、一瞬の判断と行動力が生死を分ける事態では、悠長なことは言ってられない。「命を守る」ためには「したたか」でなくてはならないのだ。酒で思考はほぼ停止しているが、大いに刺激を受けたひと時だった。
夜も更けて再会を誓ってお開きとなった。それにしてもよく飲み、よく食らって不足はない。大酒飲みを自称している本人が思うのだから、かなりやった。すでに風呂にも入っているので、このまま娘の仮設の部屋に戻って持参の寝袋に潜り込めばさぞ気持ちがいいだろう。
皆さんと別れ、本日はこれで終了だと思っていたら、娘が「もう一軒行くよ」と言ってタクシーを呼んだ。何でも仮設の屋台村に行きつけのおでん屋があるので、もうちょっと飲もうという。まあ、決して嫌いではないので喜んで後を着いては行く。
まてよ、このシチュエーションは変だぞ。これって酒飲みのオヤジがとる言動じゃあないのか?血は争えない。
五葉温泉はなかなか良かった=長距離ドライブから解放されて気分はまったりモードに
よく飲み、よく食らって不足はない
