2026年06月20日(土)

コラム・エッセイ

東北急ぎ旅⑫

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 大船渡の屋台村が立ち上がったのは震災の年の秋だと聞いた。自らも被災者である店主たちがすべてを自己資金でゼロから立て直して営業を再開するのは至難で、仮に無計画に出店しても一時は一人勝ちかもしれないが、地域の活力の底上げや、よく言うところの「にぎわいの創出」にはつながらない。

 被災地で仮設の商店街や飲食店街が建ったというニュースを耳にするが、共通しているのは店主たちの力を合わせてまちに元気を取り戻そうという意気込みだ。それを支えようという多くのファンの存在も大きい。

 そんな屋台村に足を踏み入れるのはもちろん初めてだ。日の高いうちから飲み始めてすでに酔っ払い状態だが、店舗や周囲の雰囲気がちょっと気になる。当初はプレハブの殺風景な長屋を想像していた。確かに建物は応急仮設住宅と同じような味気ないものだが、中央にイベントができるような広場とベンチなども置かれ、店舗はそれに面して配置されていた。

 規模はまるで違うが徳山の青空公園を彷彿させる。この日は特にイベントはなかったが、芸能人がショーやコンサートをしたり、カラオケ大会を開いたりと、この屋台村を中心に元気を発信してきたという。

 「きらく」というおでん屋ののれんをくぐった。娘は常連客らしく、ママの「いらっしゃい」も気負いがない。山口の田舎から両親がやってきたなどと話していたが「おかあさん」と呼んでいた。本当のお母さんは目の前にいるのに…。

 娘にとって異郷の地では他人でも心を許せる「大船渡のお母さん」が必要だったのかもしれない。多少ろれつの回らなくなった酔っ払いのみっともないオヤジを紹介するのは少々、抵抗があったかもしれないが、一応はPTAモードに切り替えて「娘をよろしくお願いします」と返した。

 壁には日本地図が張られ、全国から復興の手伝いに来た人がサインしていた。それならばと何も役には立てていないが、酒の勢いで周南市のあたりに「吉安家参上!」などと書いてしまった。

 隣のテーブルに先客で若い男性二人が飲んでいた。彼らが出た後に「大船渡のお母さん」が言うには、県外から応援に来ている警察官だという。彼らもお袋の味と安らぎを求めて来ているのだろうか。

 ここでもよく飲んだ。帰りのタクシーで娘に度々来るのかと尋ねた。悪びれる風もなく「復興の手伝いに来ているのだから地元にしっかりとお金を落とさないと…」と返してきた。うーん、確かに一理あるな。今夜は親子四人分を落とした。さっき地図にサインしたのも正当化できるぞ。

 後日談だが、この春に仮設の屋台村は廃止されたとのことだ。新しい移転先は家賃も高くなるらしく、これを機に廃業する店もあるという。「きらく」もその一つと聞いた。

大船渡の仮設屋台村=青空公園を彷彿させる

大船渡のお母さん

親子4人で貢献した

LINEで送る
一覧に戻る
今日の紙面
出光興産

出光興産徳山事業所は、エネルギーと素材の安定供給を通じて産業や暮らしを支えています。環境負荷低減や安全操業に取り組み、地域とともに持続可能な社会の実現に貢献していきます。

山口コーウン株式会社

「安全で 安心して 長く勤められる会社」をスローガンに、東ソー株式会社等の化学製品を安全かつ確実にお届けしています。安全輸送の実績でゴールドGマーク認定を受け、従業員が安心して働ける環境と「15の福利厚生」で従業員の人生に寄り添っています。

スバル合同会計 周南事務所

相続時や建物の購入売却時の相続税・資産税のご相談。
大切に育てた事業の譲渡や事業の拡大にむけて、複数の専門業者との提携で、お客さまの求める結果を一緒に目指します。

山田石油株式会社

ソロや友達と過ごす「おとなじかん」から、親子三世代で過ごす「かぞくじかん」も楽しめる日帰りレジャー施設「くだまつ健康パーク」。屋内で遊べる施設や岩盤浴、サウナも充実!