コラム・エッセイ
東北急ぎ旅⑬
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修大船渡での朝はおよそ爽快とはかけ離れたお決まり状態で迎えた。カーテン越しにすでに日が昇っているのはわかる。持参の寝袋の中で女房や娘が台所で朝食の準備をしているのだろうか、コトコトとまな板の上で何かを切る音が聞こえる。でも、なかなか動けない。
何やら言っているようだが、寝たふりをして返事をしないでいる。そのうちに娘がきょうは日曜日でも仕事に行くので「早く起きて」とせかす。そういえば昨夜そんなことを言っていたなあ。寝袋からはい出し、さほど食欲はないが味噌汁だけは流し込んだ。
山口から岩手まで随分と長旅だったが、大船渡での滞在は一晩だけ。女房は娘と別れるのが少しばかり名残惜しいようだが、仕事なら仕方がない。仮設住宅の駐車場で別れる。
きょうは列島を横断し、秋田市内で酒田市のI君と合流する予定だ。夕方までに着けばいいので特別に急ぐ必要もない。あれこれ移動プランを考えていたが、せっかくなので三陸鉄道(三鉄)のリアス線にも乗ってみたい。
NHKの朝ドラ「あまちゃん」の記憶は新しい。ただ、舞台となった北リアス線でなく大船渡市から釜石までの南リアス線だ。釜石といえば鉄のまちだ。史跡もあり、興味はつきない。山越えの途中にあの遠野物語の遠野にも寄れる。ちょっと遠回りになるが、岩手山の裾を回りこんで、八幡平の頂上付近を抜ける道路もある。その先には田沢湖もある。
などなど、まだ見ぬ場所に思いをはせる。息子は三鉄の南リアス線に乗るのなら車で先回りして釜石駅で待っておくと言って盛駅に女房と二人を降ろして去っていった。
列車の発車時刻まで少々ある。先に切符だけは買っておこうと駅舎に入り、券売機で釜石を探すが見つからない。根っからの小心者なのと、田舎者に見られそうで他人に聞くのもはばかられる。壁の時刻表を見ても釜石の駅名がない。二人で「おかしいのー」と右往左往する。まさに田舎者の典型的な姿だ。
困ったことになった。隣に観光案内所のような建物が目に付いた。何か手がかりがあるかもしれない。売店があり、椅子も置かれてお茶なども自由に飲めるようになっている。よく見ると釜石行きの時刻表がある。
そうか、さっきのはJRの駅舎で、ここが三鉄の駅舎だったのか。三鉄は随分と前にJRから第三セクターになったというが、駅舎くらい同じにできなかったのだろうか。
ちなみに、ここ、盛駅から陸前高田市方面に延びる大船渡線は津波被害を受けて鉄路での復旧を断念し、BRT(バス高速輸送システム)になっている。線路を撤去して専用道にしているらしいが、一部は一般道も走るという。要はバスだ。気づけばホームにバスが停まり、その先のホームには列車が停まっている。
JR盛駅の駅舎=三鉄の駅舎は隣だった
大船渡線の一部は鉄路の復旧を断念してバス輸送に転換した
先のホームには南リアス線の列車が停まっている
