コラム・エッセイ
東北急ぎ旅⑮
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修どうやら朝市のようだ。数10メートルほどだが、両側にびっしりと露店が並んでいる。規模はまちまちで、商店が出張販売をしているのだろうか、大きなテントを張って商品をテーブルに並べた本格的な店もあれば、コンテナやオケが数個だけの農産物の店もある。きっと自分の畑で作ったものを並べているのだろう。
商品の種類も実に雑多で、見ていて飽きない。海が近いまちだけに、魚や干物などの水産加工品が目に付く。野菜はもちろん衣料品や金物の店、農具の店や刃物研ぎのおじさんもいた。弁当や総菜の店もあった。
そういえばこの雰囲気はどこか懐かしい。須金では毎年1月21日に「市日(いちび)」と呼ばれる市が立っていた。それはそれはにぎやかで、須金のメーンストリートの両側に所狭しと露店が並び、大勢の買い物客であふれていた。「人をかき分ける」という表現も決して大げさではなかった。そうだ、あの少年のころの記憶につながる。
その須金の「市日」も平成の声を聞くころには出店者もお客も減って自然消滅してしまったが、大昔の華やかでウキウキするような感覚が少しずつよみがえってくる。ゆっくりと左右の露店をのぞきながら歩いていると、いつの間にかあのころにタイムスリップしていく。
聞くところによると、この朝市は毎月「0」と「5」のつく日、つまり5日ごとに開かれるということになる。カレンダーで日曜日に該当する朝市が月に何回あるか数えてみるとせいぜい1回で、全くない月もある。いらぬ心配だが、きょうは日曜日だからこんなに人出が多いのだろうが、平日はどれだけの人が来るのだろうか。屋根のない露店も多い。雨や雪の日、風の日はどうだろう。
帰ってからわかったことだが、この大船渡の朝市は明治時代に大火があり、手持ちの品を物々交換して食いつないだことが始まりとのことだ。それにしても曜日は無視して日にちで開くとなれば、観光客相手では今まで続いて来なかっただろう。あきらかに地元の生活に密着した朝市だ。
通りを歩く人も普段着で地元の常連さんという風で、どちらかといえば年配の人が多い。露店の店主たちも近ごろのイベントの出店者のように蛍光色の派手なスタッフジャンパーを着ているわけでもない。
確認はしていないが、震災でまちが壊滅的な被害を受けた時、スーパーやコンビニエンスストアがまだ閉まっていても、この朝市は早々に再開して生活必需品を細々とでも売っていたんじゃないかと思う。
100年以上も続いたこの朝市が世代を超えて若い人にも受け入れられ、長くつながっていけばいいなと思う。
この朝市は偶然に行き当たったものだが、半世紀前のわが町を懐かしく思い出し、その盛衰にも思いを巡らせたひと時だった。
大船渡の朝市=大きなテントの店もあればコンテナやオケが数個の店もある
年配者が多く、地元の生活に密着している
