2026年06月20日(土)

コラム・エッセイ

東北急ぎ旅⑰

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 釜石は「鉄のまち」だ。幕末の1858年に日本で初の鉄鉱石による西洋式の橋野高炉が建設されたことが始まりだ。橋野高炉跡は「明治日本の産業革命遺産」にも登録されている。

 この橋野高炉が祖となって官営の釜石製鉄所が建設され、近代製鉄業発祥の地と呼ばれるようになった。現在は新日鐵住金の釜石製鉄所として操業しているが、長い歴史ゆえに変遷は目まぐるしい。

 特別な歴史愛好家ではないが、数え歌にまでなった八幡製鉄所よりもその歴史は古いことは知っていたし、明治の大津波や先の大戦では壊滅的な損傷を受けながら再興して今に至る歴史も、数多くのエピソードとともに興味はつきない。

 そもそも、この手のジャンルが大好きだ。八幡製鉄所の高炉や転炉が見学できるようになったと聞いて、わざわざ1日かけて女房と見物にも出かけたことがある。連れは30分もすれば飽きてしまって近くのショッピングセンターに行ってしまったが、これ幸いと数時間粘って見た記憶がある。そこの資料館でも釜石の製鉄所は引き合いに出され、いつかは「鉄のまち」釜石を訪れてみたいと思っていた。

 南リアス線の終点、釜石に降り立って見上げれば釜石製鉄所だ。その歴史に改めて思いを巡らすものの、限られた時間となれば立ち寄る先も限られる。駅近くの観光案内所に立ち寄った。やはり「明治日本の産業革命遺産」に登録されたまちともなれば案内のパンフレットも充実している。

 ちょっぴり予備知識を持ち合わせているのでスタッフの若いお兄ちゃんに「橋野高炉というのは鉄鉱石を高温で溶かすためのものなのか」と質問すると、二つ返事で「そうです」という。高炉は酸化鉄の状態の鉄鉱石を還元する作業でもある。ただ高温にして溶かすという答えでは満点ではない。

 「製品の銑鉄を水戸藩に供給していたとパンフレットにもあるが、水戸の反射炉では何をしていたの」と少し突っ込んで聞いてみた。どうも的を射た回答がない。銑鉄を「鋼」にするためのプロセスを知らないと答えに詰まる。含有する炭素量を調整する精錬の工程になるのだが、そのあたりを少しかじっておかないと解説も奥行きがない。ちょっと意地悪したかな。

 全国で産業革命遺産だ、自然遺産だと世界遺産ブームに乗り遅れまいとアピール合戦に熱が入る。最近はジオパークも話題になっている。決して大多数の人が「何かようわからんが何とか遺産に行ってみるか」で訪れるわけではない。受け入れ側のソフト面での下準備がないと一過性のブームで終わってしまうかも。

 外に出ると釜石駅の構内で煙を吐く「SL銀河」を見た。JRも本腰を入れている。もうひとひねりでこの「鉄のまち」も輝きを増すこと請け合いだ。

駅前から望む新日鐵住金釜石製鉄所

SL銀河の入れ替え作業

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