2026年06月21日(日)

コラム・エッセイ

祖母~傾山縦走記③《ちょっと寄り道・地図のこと…》

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 山に登るときには地図と磁石を持っていくというのは昔からの常識で誰でも知っている。地図といっても山歩きで必要なのは国土地理院が発行している2万5千分の1の「地形図」だが、これがなかなかの優れもので、文字通り地形の起伏が分かるのだ。別の言いかたをすれば平面の紙が立体に見えるということだ。登山道がしっかり整備されて道標がうるさいほど立っている山なら略図でも歩けるがそれが怪しい山域では必携だ。極端な例になるが、意外なことに北アルプスの上高地から槍ヶ岳や穂高岳などへ至るメジャールートはある意味まるで初心者でも迷うことなく歩ける。ちょっと乱暴だが体力があって天気さえ良ければ案内看板や道標をたどって誰でも登れるくらい整備されている。

 一方で馬糞ケ岳などは、ちょっとマイナーなルートとなれば登山道というよりも踏み跡が残っていれば御の字で、けもの道との区別がつかなくなったり、突然形跡が消えることもある。そんな時こそ地形図が大活躍する(正確にはそれ以前に現在地と目標を確認しておく…)。この地形図さえあれば道の無い山や雪山など人工物が全くないところでもちゃんと行って帰ることができるのだ。

 今、ここで白状するが、実はこのおじさんは地形図コレクターでもある。半世紀前は2万5千分の1の地形図は全国を網羅するほど発行されてなかった。主に山では5万分の1の地形図を使っていたが、そのころから歩いた山やこれから行きたい山域の地形図をこつこつと集めている。さらに興味のある山域は最新版が出るとまた買いそろえるので相当な枚数を持っていることになる。

 またまた話が飛んでしまうが、高校の夏休みに大阪まで歩いて行こうと計画したことがある。これも語れば長くなるので別の機会とするが、中国山地の山あいを地形図上で最短なルートを探し、峠を越え里をたどりながら行こうというものだ。結果的にざっくり今の中国自動車道の予定地を歩くことになるのだが、その予定コースの5万分の1の地形図を全て入手した。連日連夜どのルートにするかまだ見ぬ土地を想像しながら考えていた。今でも何十年も前の赤鉛筆の線が延びる地形図を引っ張り出して当時を懐かしむ。

 元来がズボラな人間なのでそれらを几帳面にファイリングしているわけでなく、おおよその山域ごとに段ボールに詰めているだけだが、北アルプスから祖母・傾の縦走に突然変更になっても10分ばかりごそごそ探せば見つかった。10年ばかり前のものだが山歩きには支障はない。それに国土地理院は地図データを無料でネット上に公開しているし、登山用にコースタイムまで入った地図もプリントアウトできる。それでもザックの一番奥に正規の地形図を忍ばせる。

 これで準備は整った。登山口まで車での移動となるが、途中で休憩しながらいけば6時間はかかる。急ぎ旅でもない。日が暮れて力尽きたら車中泊だ。

「上高地から槍へは天気が良くて体力があれば初心者でも登れる」

「地形図上で最短なルートを探し、峠を越え里をたどりながら歩いた」

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