2026年06月20日(土)

コラム・エッセイ

今年も「走れ!おじさん」⑯《熊の恐怖との闘い?》

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 長々と「走れ!おじさん」を書いてしまった。多くの人は「えらかった」「足がけいれんした」などの話題に飽き飽きされているに違いない。おまけに賞をとったなどとひけらかすなど、いかに度量が狭い人間かを露呈してしまっただけかもしれない。

 そもそも秋口になってランニングシーズン再開にあたり「有言実行」、今年も「走れ!おじさん」になりますよと宣言し、退路を断ちたかったという、のーくれ者ゆえの愚策でもあったのだ。

 九月の声を聞いても猛暑、残暑に走るなど自殺行為だと言い訳していたが、下旬ともなれば日が落ちると多少は過ごし易くなってきた。春に自己ベストを出し、十キロを走っても一キロあたり五分を楽勝で切れるまでに脚力もついていた。

 さあ、今シーズンの目標はいかほどに設定しようか、などと思いを巡らせながらおよそ半年ぶりに走ってみた。ところが全く足が動かない。五分はおろか六分で走ることさえ苦しい。完全に体はリセットされていた。こんなはずではないと翌日も走ったが、やはり足が動かない。もう元には戻らないかもしれないとガッカリし、走るのをやめようかな、などとも思いもした。

 しかし、そこは「おじさんも頑張る!」だ。何とか昨シーズンを思い出し、その気概を取り戻そうと今年も「走れ!おじさん」を書き始めたという顛末(てんまつ)だ。

 気を取り直して一から始めようと、散歩に毛が生えたようなスピードから再開したが、毎年、秋口になると熊の目撃情報を連日のように耳にする。いくら国道筋とはいえ、日が暮れた山の陰から飛び出てくるのではないかとひやひやしながらのランニングだ。そこで愛犬ポチを連れて走れば人間の千倍の嗅覚で事前に察知してくれる、逃げる時間も稼げると期待していた。

 夕方、いつものように国道の歩道をポチとのろのろと家から一キロばかり走っていると、いきなり野生化した大型犬二匹がポチに食いついてきた。ポチはリードにつながっているので反撃も逃げることもできない。何とか離そうとするが、背中や尻に牙をたてて離れない。ポチに食いついたまま引きずる状態だ。首輪が抜けるほど強く引っ張っても何度もかみついて離さない。

 果たしてポチは瀕死の重傷を負ってしまい、もう助からないと覚悟を決めた。難しいなら楽にしてと獣医さんに頼んだほどだ。全身六か所。四十針以上も縫合してもらう大手術となった。

 しばらくは走ろうという気にもならなかったが、あれから二か月、ポチは奇跡的に助かり、復活を果たした。リハビリも兼ねてのんびり散歩から始め、今では普通に走れるようになった。その生命力の強さに驚いたし、あの時、身代わりになってくれたのかもと思う。

 それにしても熊も怖いが野生化したペットも怖い。我が家のポチもいつ、よそ様に迷惑をかけるかもしれないが、責任は持とう。

昨シーズンは1キロが5分を余裕で切れていたのに…

野犬に襲われたポチ=一時はもう助からないと覚悟を決めた

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