2026年04月30日(木)

トップインタビュー

維新精神で日本酒復権

山口県酒造組合会長 山縣俊郎さん(70)

PROFILE

やまがた・としろう
1948年 周南市生まれ。
72年 慶応大卒。清酒メーカー勤務を経て74年 家業の酒造会社「山縣本店」(周南市)に入る。
95年 4代目社長に就任。2016年 県酒造組合会長に就く。周南市の自宅で妻泰子さん(65)と暮らす。

日本酒の消費量低下に歯止めがかからない中、山口県産の日本酒は昨年で11年連続出荷増と1人気を吐いています。
1つの要因は各蔵元が純米酒や吟醸酒などの高級酒路線を進めたことです。
高級酒路線は他の都道府県の酒造会社も志向していますが、軒並み苦戦しています。山口県だけが好調なのは特別な理由があるからだと思います。
 蔵元の世代交代が同じタイミングで進み、意識の高い若い経営者が次々に生まれました。先代までは生産統制の時代が長く、自由に酒造りをする意気込みに欠けていました。1974年に始まった生産自由化の波にのまれ、相次いで廃業、倒産に追い込まれました。自由化以前は県内に140軒あった蔵元は現在20軒まで減っています。近年の躍進の前にはこうした暗い時代があったのです。
 今の経営者は生まれた時から自由化の時代しか知りません。「うまい酒を造って飲んでもらおう」と原点回帰し、切磋琢磨して酒造りに励みました。社長兼杜氏の蔵元が多いのもその表れです。
その象徴が「獺祭」の旭酒造(岩国市)ですね。
 現社長が先代から経営を引き継いだ時、会社は経営危機に瀕(ひん)していました。苦心の末に獺祭を誕生させ、90年代に東京進出を図りました。
 山口県民は全国的なブランドを好む県民性があって基本的に地元の酒は飲みません。隣の広島県は逆に地元の酒しか飲まず、売り込んでも跳ね返されました。大阪は灘(兵庫県)の天下です。だったらとテリトリージャンプで東京に打って出たのです。そこで好評を博し、成功しました。東京の情報発信力は大きく、評判は全国に広がり、最も有名な蔵元の一つになりました。
獺祭の成功例を他の経営者が間近で見て後に続いたのですね。
 それが「やまぐち地酒維新」キャンペーンです。10年前に始めました。20すべての蔵元が連携して東京でPR活動を重ね、山口の酒の知名度が飛躍的に上がりました。
かつての苦境の時代がバネになって好調な業績につながったのですね。
 明治維新を成し遂げた若い志士の姿に重なります。江戸時代、長州藩は幕府に虐げられていました。それが志士の反骨心を生み、幕府を倒す原動力になりました。今の蔵元も若くて向上心があり、幕末の志士を垣間見る思いです。われわれの世代ができなかった日本酒の復権を実現し、頼もしい限りです。
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