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経済 : 光市のニュース
映画のような日々を発信 笑顔あふれる“福祉メイキングスタジオ「うみべ」”
経済光市山口県光市室積の「働く」をテーマにした障害者・高齢者支援施設の福祉メイキングスタジオ「うみべ」では、支援を受けながら働く20人の映画のような日々をSNSで発信し、笑顔があふれている。
福祉施設10か所に17年ほど勤務してきた前崎知樹代表(37)は「利用者や家族が既存の就労支援に対して、ノルマがあってどんどん稼いでいくという仕組みはあるが、そうじゃない、自分のペースで働きたいという声を聞いた。既存の施設にはない、自分の個性やペースに合わせて支援を受けながらゆったりと働ける場所を」と「うみべ」を4月1日に開いた。
「うみべ」は中四国、九州で初めて障害者の就労支援をベースに、高齢者にも同様に支援を受けながら働く仕組みを持ち、就労継続支援B型、生活介護、高齢者デイサービスの3つの機能を合わせた共生型多機能施設。
海が目の前にある建物で、築50年の日本家屋をリフォームしたサロン、庭にウッドデッキのテラスと開放的な空間。利用者だけでなく、一般の人もカフェや勉強、作業にフリードリンク付きで、終日300円で利用できる。
カフェの運営や掃除、飲み物の補充、接客などを「うみべ」全体で利用者ができる仕事として用意する。同時に個人の個性や好きなこと、やりたいことを仕事につなげていくことに焦点を当て、絵描き、レジンアクセサリー作家、持ち前のキャラクターを活かしてモデルにと様々。施設としてではなく、それぞれ個人で考えた屋号を持ち活動する。
一夜にして応援が日本中から届く
絵を描くのが好きな利用者の“オカピー”さんは水性ペンを使った細かくてカラフルな絵を作品展に出品、ポストカードにして販売などをしている。
利用者の日々の奮闘の様子はSNSで発信し、日本全国にファンができた。利用者の誕生日に花が届き、ミシンが欲しいなどと投稿するとプレゼントが届くことも。
オカピーさんはファンもたくさんいて、ポストカードも大人気とあって、県障害者芸術文化祭で出品した作品「無題」が受賞すると確信していたが、まさかの落選。落ち込んでしまい、会話もできない様子を8日、インスタグラムに「オカピーを助けてくださる方を募集していいでしょうか?」と添え投稿した。
一夜にしてたくさんの反響が届いた。励ましの声、うちで個展を開かないか、光市の田中陽三市議からは障害者アートを支援するため動くなどと連絡が届き、オカピーさんは復活。取材した9日には元気に制作に取りかかった。
オカピーさんは「海の目の前で絵を描くと楽しい。テラスやサロン、場所を変えながら制作する。夢はいつか東京で個展を開くこと」と笑顔を見せる。
SNS、マルシェの開催で“福祉の面白さ”発信
前崎さんは福祉業界の課題、人手不足に対し「福祉の仕事の面白さは日々のハプニングがまるで映画のように起きるところ。こたつやスプリンクラーが壊れたり、落ち込んだり、楽しかったり。SNSで発信することで、若い人たちにもっと仕事の面白さを知ってもらいたい」と話す。
外部と関わる機会を設けるオープンな環境作り、イベント開催で毎日違う景色を楽しめるよう工夫しており、サロンではマルシェや個展を開くこともできる。9日も雑貨やアクセサリー、パン販売などの「うみべdeマルシェ」でにぎわった。
職員と利用者がユーチューブで福祉業界の現状や新しい制度について顔を出さずにイラストで出演し、トークする動画をアップしていく予定。イラストはもちろん利用者が手がけ仕事にする。
前崎さんは「いつか日々の映画のようなできごとを本当に映画化できたら面白そう」と楽しそうに夢を語った。
(松井光希)
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