ニュース
経済 : 周南市のニュース
【周南市】日本ゼオン㈱ 現場力で生産革新 カーボンナノチューブに期待
経済周南市日本ゼオン㈱徳山工場執行役員工場長
宮城 孝一さん(57)
山口県周南市那智町の日本ゼオン徳山工場は同社の主力工場。合成ゴムや重合法トナー、最近では新素材のカーボンナノチューブの開発・製造拠点としても注目されている。一方で二酸化炭素削減などのカーボンニュートラルは周南コンビナートにとっても大きな課題。同工場も周南市や出光興産㈱、東ソー㈱、㈱トクヤマとともに周南コンビナート脱炭素推進協議会を構成する。4月に就任した宮城工場長にこれからの取り組みなどを聞いた。(聞き手・延安弘行)
― 高岡工場長からの就任で、徳山工場での勤務は初めてだそうですね。
宮城 途中入社で日本ゼオンに入り、当初はトナーの開発、化学的なことをやっていました。37歳のとき、トナーからはずれて精密光学研究所の光学フィルムの開発リーダーになって、富山県の高岡市の研究所で開発に携わり、フィルム製造の子会社のオプテスに出向して製造課長、技術課長をさせて頂き、フィルム関係の営業も経験しました。それから事業戦略室で、投資計画や中期経営計画の策定に携わり、生産計画を立てる部の部長もしました。
2015年からはゼオンケミカルズ米沢の社長を5年ほどやらせていただいあと、高岡工場の工場長に2021年1月に就任し、今年4月に高岡工場長から徳山工場に転勤してきました。
化学と違ったことや、営業、生産計画、いろんなことをやっているのが私の特長といえば特長でしょうか。
― 社長も5年間務めたんですね。
宮城 香料を生産する会社で従業員は40人ほどでした。大きな会社でなかったし、日本ゼオンの子会社でしたが別法人であることから比較的自由にいろんなことができ、いい経験になりました。
― 光学フィルムの事業が長かったようですね。
宮城 13年間携わりました。光学フィルムというのは液晶テレビをより綺麗に見せるフィルムで、この分野では高いシェアを持っていてわが社の事業の柱の一つになっています。その開発から生産、営業まで携わりました。
― 光学フィルムというとどうやって作るんですか。
宮城 水島工場(岡山県)で作っている樹脂が原料で、数十ミクロンの薄さに伸ばし、光学的な特性を持たせます。フィルム事業がゼロからスタートした時期に参画してハードワークでしたが、世界初の光学フィルムや斜め延伸フィルムも私のチームで開発してプラスチック成形加工学会の青木固賞や、ものづくり日本大賞経済産業大臣賞もいただきました。
― 徳山工場についてどう感じていますか。
宮城 徳山工場は規模的には高岡の2倍ぐらいあり、重責を感じています。工場の雰囲気は非常にまじめだと思いました。高岡では瀬戸内はラテン系という人もいましたが、いろんな人と話すと堅実にやる人が多いなあという印象があります。
― 工場としての現在の取り組みを教えてください。
宮城 わが社全体にいえることですが、全社的にトヨタ方式の化学工業版のダイセル式生産革新を取り入れて、プラントのムダ、ムリ、ムラをなくす活動に取り組んでいますが、非常に現場力が高くそれが一つの強みかなと思っています。
これからの課題としては設備が年をとってきていることがあります。稼働して50年になる設備もあり、問題が顕在化する前にDXを使って予兆を検知するとか、そんな工場にしないといけない。プラントもたくさんあってスクラップ&ビルドも視野にいれないといけないでしょう。
― 徳山工場は新素材のカーボンナノチューブの開発・生産拠点でもあります。
宮城 カーボンナノチューブは次の一つの収益源になってほしいと思っています。今年2月に国際ナノテクノロジー総合展・技術会議のnano tech大賞2023をいただき、世間的にも注目を浴びています。独創的なものを開発しているので非常に楽しみです。
― 現在は用途開発の段階ですね。
宮城 昨年2月にプレスリリースしていますが、例えば「不揮発メモリ開発」があります。記憶装置は常に電気をかけていないと記憶が消えてしまいますが、カーボンナノチューブを使うことで電力を与えなくても記憶を保持できる不揮発メモリを作ることができます。低消費電力化や大容量化、コスト面で実用化の技術の確立を目指していいます。有望な市場で、楽しみです。
― カーボンニュートラルも課題ですね。
宮城 周南市の協議会にも参加していますし、会社として2019年度比で2030年度に排出する二酸化炭素を半分にする方針です。具体的にはアンモニアをいかに活用するかとだと思います。ボイラーの燃料をアンモニアにすることも一つの方法として検討していかなければと思います。
― 雇用の確保という点でも地域に貢献しています。この数年はコロナ禍で中止になっていますが、毎年夏に敷地内の広場にやぐらを立てて開き、社員の皆さんと市民が一緒に輪になって踊る和楽踊りも市民の楽しみの一つです。
宮城 今春は新卒20人が入社しました。今後もコンスタントに採用していきたいと考えています。和楽踊りも今年は開きます。
| 【宮城孝一さんプロフィール】 |
|---|
| 富山県出身。上智大学理工学部機械工学科を卒業し、他社で精密部品の設計をしていたが、30歳のとき、日本ゼオンに入社した。座右の銘は上杉鷹山の「なせばなる、なさねばならぬ、なにごとも」。 趣味は週末の散歩。自宅は千葉県で2015年から単身赴任を続けている。 |
