2022年01月24日(月)

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記者レポート : 周南市のニュース

カーシェア水素車に試乗 ガソリン、HV同様、快適な乗り心地

  • 試乗車したクラリティ=山口県周南市の徳山競艇場駐車場にて

  • スイッチを押して表示されたパネル=山口県周南市の徳山競艇場駐車場にて

  • 水素ステーションでの充填量表示=山口県周南市栗屋の水素ステーション

 二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして注目される水素。山口県周南市は2014年に水素利活用構想を策定し、16年からは水素自動車の周知を狙って市民への無料カーシェアリングを始めた。環境省からの委託による実証実験を兼ねたカーシェアリングはこの10月で終了したが、10月1日、環境負荷が小さい最先端の自動車を体感してみた。(山根正)

 貸し出されたのは、ホンダの「クラリティ FUEL CELL」。液体水素を燃料に自家発電しモーターを回して走る燃料電池自動車「FCV」で、外部からの「充電」ではなく専用の水素ステーションでマイナス40度に近い水素を「充てん」して走り続ける。

 市役所の商工振興課で受け付けを済ませ、庁舎1階の駐車場で目にしたクラリティは、想像より大柄で、同社の現行型シビックとインサイトに似たデザイン。運転席に乗り込み、ハンドルの右にあるプッシュスタートボタンを押すと、フロントパネルに表示が出てモーター音が聞こえた。

 運転席と助手席の間のサイドブレーキボタンを解除し、ドライブのDボタンを押してブレーキペダルを足から離すと車が動き出した。

 普段乗っているオートマチックのガソリン車と操作は何も変わらない。ただ、走行中のエンジン音がない分、タイヤがアスファルト路面を転がる音は大きい。アクセルを踏むと、新幹線の加速時のような高い音のモーター音、または離陸前の旅客機のジェットエンジン音に似た音が聞こえた。ブレーキを踏むとモーター音が低くなる。

 低速、中速、高速のいずれも加速は滑らかで、運転は楽だった。本社がある周南市栗屋を出て国道188号を光市方面に進み、島田交差点を左折して北上。熊毛インターから山陽道に入り徳山西インターまで走らせた。一般道では湯野から徳地方向に向かい、米光を抜けて高瀬サン・スポーツランドへ。米光に戻って山を超え市街地に向かい最後に栗屋の水素ステーションで水素を充填した。

 充てん量は1.15キログラム。走行距離は113キロ。当日の水素価格は1キログラム1,210円だった。信号機のある市街地、高速道路、山道を試乗したが、快適なドライブだった。

経済性がネック、ホンダは生産中止

 走行中は平均燃費が表示され、水素1キログラムあたり110キロだった。水素を満タンにした際にパネルに表示された航続可能距離は520キロ。タンク容量は5キログラムで、水素ステーションまでの往復距離を仮に100キロとすると、実際に自由に移動できるのは420キロ。水素5キログラムで約6,000円、1キロ走行あたり11.5円は、経済性でハイブリッド車、ガソリン車と同等。県内の水素ステーションは周南市1カ所のみとなっている。

 リース専用のクラリティは5年間のリース料が780万円と高額。県内で登録されているFCVは10月1日時点で31台と普及は進んでいない。自動車として高い完成度を持ちながら、メーカーのホンダは採算性を理由に8月でクラリティFCVの生産を中止した。

5年間で利用者533人

 市によると5年間のカーシェアリング事業での利用者数は533人。走行距離は約9万キロで消費水素量は900グラム。

 利用した市民からは「今後も継続してほしい」「FCV普及には価格の引き下げや水素ステーションを増やすことが必要」との声が多かった。

 市は10月のリース契約終了後にクラリティを返却した。

 11月中旬に英国で、地球温暖化防止のため二酸化炭素排出量の削減を目指す国際会議「COP26」が開かれるなど、石油エネルギーからの転換は待ったなしの状況だ。

 個人や企業など消費側の負担がどれだけ抑えられるか、国、大学、企業による技術開発が急がれる。