2026年04月26日(日)

コラム「一言進言」

もし三島由紀夫が生きていたら

もし三島由紀夫が生きていたら~憲法改正に何という?~

□昭和43年(1968)、44年(69)ごろ、全国で学生運動が沸き起こり、国際反戦デーなどでは、東京・新宿などで相当な騒乱になり、破防法が適用されるなど、1,500人を超える学生が逮捕された。一方、民族派と呼ばれる勢力も増えて、天皇を中心にした憲法改正を訴えた。東大全共闘と作家、三島由紀夫の討論会が開かれたのもそのころだ。三島の「天皇と一言言ってくれれば君たちと共闘する」とかみ合うか合わないかわからない議論は注目された。
□民兵組織「盾の会」を結成し、狂信的な若者を従えた三島は、市ケ谷の自衛隊駐屯地で、眼前の自衛官たちに「立ち上がれ」と声を張り上げ、ざわつき、嘲笑する自衛官たちに失望、腹を切って自決した。日本の伝統と武士道を守れと45歳の人生を駆け抜けた三島の生きざまは衝撃的だった。
□浅間山荘事件を映画にした若松孝二監督が、三島をテーマに映画にしていた。どこか憂国を論じる三島に共感するところがあったのだろう。官僚主義で、物質主義の世の中に危機感を覚えたことが共通点だったかもしれない。何よりも武士道を重んじたことが、左翼的な人たちにも受け入れられたのかもしれない。潔さを行動の要にしたことだ。
□今国会で安倍首相が所信表明で自衛隊などをたたえた場面で、自民党議員が総立ちで拍手した。何か中国の議会を見ているようだった。正直、政治家の多くに、国を守るために命を投げ出す覚悟を感じない。潔い政治家を久しく見ない。責任を取らない官僚主義国家になって、国家に期待できない国民が増えたのも事実だろう。富山市議会の政務活動費の使い方、東京都の豊洲の盛り土問題、各地の不祥事に、武士道も何もあったもんじゃない。
□こんな中で憲法改正を語られても、にわかには信じきれない。三島も、決して大戦中の軍隊を美化しているわけではなかった。2.26事件を起こした青年将校たちにどこか想いも寄せていた。純粋に国を憂い、国家としての品格を重んじる、そんな官僚や政治家を求めていた。都合が悪いことはすべて隠そうとし、選挙に有利かどうかが判断基準の風潮に腹をすえかねたのだろう。
□三島事件から約50年。憲法改正がようやく現実味を帯びてきた。「これで憲法改正はなくなった」と自衛官の前で嘆いて見せた三島が、今の世の中を見たらどう感じるだろうか。お金をもうけたものが一番。武士道などは死語に近い。自己保身に邁進する官僚や政治家の前で何を語るだろうか。ドン・キホーテのごとき行動だったが、なぜか忘れられない。

(中島 

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