2025年11月19日(水)

コラム・エッセイ

不満と不安

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 もう結果は出ている自民党総裁選挙。当選された方にはおめでとうございます、これからの日本の舵取りよろしくとお伝えしたい。

 自然界も人の世界も想像を超えて変化する中で国民の安心と安全を支えていくのは政治の力だから、誰が選ばれてもその先頭に立つ人になるのがほぼ確実な(そうでなかった先例もあるが)与党第一党総裁を選ぶ行事は、国政選挙並みの関心を集めてきた。

 我こそはと名乗りを上げ推薦されて立候補した方々が、それぞれに練り上げた政策を掲げて、背後を囲む世論を意識しながら、まずは身内に支持を訴えて2週間の論戦を広げてきた。それぞれに、それぞれの経験を基に、それぞれの思いを訴えていて、工夫努力の跡が感じられたが、この2週間、どの主張を聞いても「そうだ、これだ」と拍手で迎えられるものが感じられなかったのは、かなり寂しい。

 各候補が一様に訴えたのは、物価高対策としての減税・給付金、賃金増についてで、議員や党員でなくても国民全体の関心事だから対策を考え政策を立てるのは当然なのだが、「それだけ?それで終わり?」というのが正直な思い。

 毎日のように上がる物価。ガソリンも米も高値止まり。上がらぬ賃金、高い税金、社会保障費。何とかしろの声に答えられなければ当選できない。政権維持はおぼつかない。そんな恐怖にまずおびえ、不満解消に努めなければと心が集まるのは理解出来るが、庶民には目の前の不満の解消で満願成就ではなく、不満の元にある不安の解消。

 なぜそうなっているのか、なぜそんなことが起こるのか、その原因になっていることの解消、そんな状態をもたらしている社会の仕組みの改善を求めている事を知る必要があると思う。総裁選期間中、不満の解消と並んで不安の解消を訴えた候補は、私の知る限りいなかった。

 中の1人が自身の訴える政策への質疑応答の中で「不安の解消が大切だ」と述べていたことに、せめてもの救いを感じることが出来た。耳に直接入ってくるのは不満の訴えが圧倒的に多いだろうが、その根底をつなぐ不安を知り、不安の解消を通じて初めて安心が得られることに考えを及ばせて欲しいと思う。不満の解消は言わば短期決戦。施策の結果を短期で得て、その時々の評価も定まり、集票につながる。不安の解消には時間がかかるものが多い。

 なぜそうなっているのか、見極めることが難しい。見る者によっても違う。どうすればいいかはもっと難しいことが多い。それでもやらなければ出来ない。抵抗勢力も根強い。手をつけるのもやり通すのも覚悟と時間が必要。それをやり通すだけの力と時間を得るためには何よりも政治と為政者に対する信頼がなければならない。その信頼がない、その信頼を失ったことが今日の惨状を招いている根本原因ではないか。

 荒海を進む船の舵取りは、このことを自分の声で語る人であって欲しいと願う。(カナダ友好協会代表)

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