コラム・エッセイ
選良たち
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子雨も気温も台風も平年との比較が意味なくなってしまった異常続きの自然界がなんとか落着き、つかの間の秋がようやく訪れたと思う頃、人間界の政界が平年を離れた異常行動を始めた。気になる小異には目をつむっても、一人では味わえぬ甘さを共に味わおうと共に縫い上げた蜜袋に、大切に蓄えた連立の蜜。
使い込まれてほころび破れ、蜜が漏れ出した蜜袋をなんとか閉じようとつぎあてを探したが1枚では足りず、手近のあり合わせの色違いの材料を貼り合わせて塞ごうとなりふり構わず励んでいる。大変ですねと声をかけたくもなるが、あんな当て布ではあの破れは覆いきれないし、それに縫い目もすぐほころびてしまいそう。
もっといい材料を見つけてしっかり繕っておかなければ、すぐまた同じ事になるよとあきれもする。グループ内での権力闘争に勝利して、いつもなら、自動的に最高権力者の館の主になれるのに、すんなりと思い通りに運ばない舞台進行となって、あちらを塞ぎ、こちらを引っ張りの苦労を重ねなければならないお方に「大変ですね」と労い同情しなければならないような他家の騒動だ。
関係者への労いも同情も出来ない気持ちになるのは、騒動の舞台を作っているのが主役脇役その他大勢ばかりでなく、脚本演出含めて全員が「選良」と言われる人たちばかりだから。
選良とは選ばれた人「エリート」。所属するグループ全体に関わる課題を解決するために全体の中から選ばれて、必要な権限を与えられて活動する。生徒会長、村長、町長、市長、知事、市会議員、県会議員、国会議員。それぞれのグループで選良と言われる。必要なら報酬も支払われる。権限はグループの全員に及ぶからそれぞれのグループ内では権力者になれる。
今日本の中で一番大きなグループは国民で、国民の選んだ選良は国会議員。国民の行動範囲を決める法律を作る大きな権限と、十分すぎる報酬を支給されている。所属する政党は違っても、権限は全国民に及び、報酬は国民から払われているのだから、その行動の目的目標は自分を選良としている国民の安全・安心の保障でなければならない。自分の利益安全を第一に考え守るのは一人一人の国民(庶民)の発想であり権利だ。
国会議員と言えども一人一人は庶民でもあるから、我が身大事の言動、逃げ隠れをする権利はある。しかし、国民の選良である国会議員は国民の安全・安心の確保を第一に行動するという義務を負っている。その義務を果たすことを前提に権限と報酬を得ている。今国民の選良たちが群がって繰り広げている政争は、我が身の利益・安全確保最優先の庶民の原理のみが働いた行動でしかない。
この選良(悪?)達が、選良の義務に目覚める日の到来を待つのは「百年河清を俟(ま)つ」ことなのだろうか。それなら選良の椅子を明け渡すしかないことを、次の投票で思い知ってもらうしかないだろう。
(カナダ友好協会代表)
